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小説の中のワンシーンに感化され、本屋をオープン
Celeina:本屋さんをオープンされたのは去年ということですが、その前は何をされていましたか?
岸波:熊手職人をやっていました。年がら年中作って、新宿の花園神社の酉の市や、その後12月とかに大宮とかでも販売するんですけど、そういう生活を10年以上していました。
タカノ:そこから本屋さんをやろうと思ったのはどういうきっかけだったんですか?
岸波:大学の時、詩を専攻していたんですよ。詩集の本屋が少ないというのもあったし、いずれ本屋を開きたいという気持ちはありました。一番大きいのは、新婚旅行でバリ島に行ったんですが、その時に東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』という小説を読んでいたんです。その小説の中で、村上春樹の『プールサイド』という短編に言及するところがあるんですが、「35歳が人生の折り返しだ」というシーンが出てきたんです。普段だと何とも思わなかったと思うんですけど、そういう幸福な時に、妻の顔とか景色眺めて、このままじゃ駄目だな、動いた方がいいと思ったんです。絶対に何かやろうと思った時に、本で何かやろうと。そこから本を作り出して本屋に置いてもらって、去年38歳で本屋をオープンした感じです。
Celeina:本屋さんを開く前に、本を作るところからスタートしたんですね。
岸波:そうですね。うちに置いてある本みたいに自主制作して、それを本屋さんに置いてもらいました。絵も描くので、展示をしたりして、そういう作家活動をしていたら、本屋の立場も分かるかなと思ったんです。本屋をやるというのは頭にあったけれど、作家としても活動しているので、今でも書評などを書く仕事もしていますし、詩集のアンソロジーが田畑書店から発売される予定もあります。それも本屋で書くんですよ。「機械書房」の中で何か原稿を書いたり、間に合わない時は、水彩画を店で描いたりしていました。そういうことも起こり得るアトリエとしても使っていますね。