グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
10月22日は、作家のオルタナ旧市街さんからの紹介で、水道橋の書店「機械書房」の岸波龍さんが登場。熊手職人から書店をオープンするに至った経緯や、「機械書房」で扱っている本のラインナップについて伺いました。
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入手困難な文芸誌のバックナンバーも取り扱う
Celeina(MC):オルタナ旧市街さんからのご紹介ということで、「機械書房」についてInstagramやXを拝見させていただいたんですけども、とても気になりました。タカノさんは気になるラインナップありました?
タカノ(MC):僕は5大文芸誌の古本が気になりました。
岸波:5大文芸誌の古本は100冊ぐらいあると思います。好きな人にはぶっ刺さるかと。
タカノ:5大文芸誌は古本屋とか探してもなかったりするんですよ。
Celeina:バックナンバーで買うのは難しかったりするんですか?
岸波:バックナンバーは難しいですね。最近のものであればまだ書店に置いてあったりもするかもしれないけど、2000年から2015年くらいの純文学って面白いんですよね。なので、その辺りを取り揃えているところは少なくて。それこそ作家とか編集者とかに売ってもらったりして、売っては増えて、という感じです。
タカノ:いろいろ欲しいバックナンバーが結構あるんです。単行本化されている本もあるんですけれど、されてない話もいっぱいあったりするし。あとは受賞号があるじゃないですか。受賞号がすごく好きなんですよ。
岸波:受賞号は人気があるので、受賞号からなくなっていきますね。
Celeina:何で受賞号が人気なんですか?
岸波:作家になりたい人が受賞号を読む、というのがありますね。あとは、単行本化してないものからなくなっていく、ということが多いです。
タカノ:受賞号は、審査員の先生方の選評が書いてあるんですよ。審査員も命懸けで読んで選評を書いている方が多いので、それがすごく熱くて面白いんです。それはやっぱり文芸誌でしか見られないものだったりするので。
岸波:そうですね、単行本には載っていないので。
タカノ:今度伺います!
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4坪の書店で、お客さんと会話をしながら本をおすすめする
Celeina:そんな「機械書房」ですけれども、去年の5月にオープンされたばっかりなんですよね。
岸波:そうですね。
Celeina:文芸誌以外にはどんなラインナップがあるんですか?
岸波:文学専門店なので、小説とか随筆、昨日のオルタナ旧市街さんのような本もあるんですけど、とにかく力を入れているのは詩集ですね。現代詩を扱う本屋は東京でも数少ないので、詩集をメインにすることで知られていると言っても過言じゃないと思います。
タカノ:おすすめの1冊とかありますか?
岸波:おすすめの1冊は、海外だとフェルナンド・ペソアというポルトガルの詩人の『ペソア詩集』ですね。今年はガルシア・マルケスの『百年の孤独』が文庫化しましたけど、それみたいな感じで、復刊気味で出たんですよ。それが非常に良くて、何かしら読んだ人が影響を受けるような言葉が書かれているんじゃないかなと思います。誰が読んでも面白い、万人向けの普遍的な詩集ですね。『ペソア詩集』を買いに来たというお客さんも多いですね。
Celeina:お店は4坪と伺いました。
岸波:はい。4坪というと、8畳ぐらいなんです。本当に小さいんですけど、正方形の形をしていて、外側に古本がバーンと並んでいて、真ん中にいわゆる新刊書籍が並んでいる感じの本屋です。

Celeina:岸波さんがご自身でも1冊1冊セレクトされているんですか?
岸波:古本はもちろん買い取りとかありますけど、新刊は極力読んで置いているつもりです。こっちが置きたいと思っていた本を、置いて欲しいという連絡が来て置くというパターンも多いです。店が小さいので、本棚みたいに横に並べていくとたくさん置けないから、平積みで置いています。それこそ詩集でも30冊仕入れることもありますし、結構その辺が変わっていると思いますね。平積みばかりです。
タカノ:岸波さんのお話を聞きながらおすすめを教えてもらうというのもありですか?
岸波:もう八百屋みたいな感じですね。本をおすすめするということは、新鮮な魚を売るみたいな感じに近いかも知れないですね。
Celeina:岸波さんのプレゼンありきのおすすめだったら、間違いないですよね。
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小説の中のワンシーンに感化され、本屋をオープン
Celeina:本屋さんをオープンされたのは去年ということですが、その前は何をされていましたか?
岸波:熊手職人をやっていました。年がら年中作って、新宿の花園神社の酉の市や、その後12月とかに大宮とかでも販売するんですけど、そういう生活を10年以上していました。
タカノ:そこから本屋さんをやろうと思ったのはどういうきっかけだったんですか?
岸波:大学の時、詩を専攻していたんですよ。詩集の本屋が少ないというのもあったし、いずれ本屋を開きたいという気持ちはありました。一番大きいのは、新婚旅行でバリ島に行ったんですが、その時に東浩紀の『クォンタム・ファミリーズ』という小説を読んでいたんです。その小説の中で、村上春樹の『プールサイド』という短編に言及するところがあるんですが、「35歳が人生の折り返しだ」というシーンが出てきたんです。普段だと何とも思わなかったと思うんですけど、そういう幸福な時に、妻の顔とか景色眺めて、このままじゃ駄目だな、動いた方がいいと思ったんです。絶対に何かやろうと思った時に、本で何かやろうと。そこから本を作り出して本屋に置いてもらって、去年38歳で本屋をオープンした感じです。
Celeina:本屋さんを開く前に、本を作るところからスタートしたんですね。
岸波:そうですね。うちに置いてある本みたいに自主制作して、それを本屋さんに置いてもらいました。絵も描くので、展示をしたりして、そういう作家活動をしていたら、本屋の立場も分かるかなと思ったんです。本屋をやるというのは頭にあったけれど、作家としても活動しているので、今でも書評などを書く仕事もしていますし、詩集のアンソロジーが田畑書店から発売される予定もあります。それも本屋で書くんですよ。「機械書房」の中で何か原稿を書いたり、間に合わない時は、水彩画を店で描いたりしていました。そういうことも起こり得るアトリエとしても使っていますね。