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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

作家・鈴木みのりは、アイドルを楽しく応援するためにフェミニズムの視点で捉え直す

2024.6.24

#BOOK

グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。

1月22日は作家の鈴木みのりさんが登場。和田彩花さんと共同特集編集された『エトセトラVol.8「アイドル、労働、リップ」』が生まれるまでの経緯や、注目しているエンタメなどについて伺いました。

とある雑誌の編集者に声をかけられたことで執筆業へ

Celeina(MC):鈴木みのりさんはジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムの視点から執筆されることが多いということですけれども、執筆を始めたきっかけは何だったんでしょうか?

鈴木:自分から作家になろうということは思ってなかったんですけど、ある雑誌の編集者にナンパをされたんです。それで他の編集部の皆さんとも会ったんですが、就活がうまくいかない時期でだったので、そういう話をしていたら「うちだったらこれぐらい出せるよ」って言われて、「やります!」という感じで。

タカノ(MC):ミラクルですね。

鈴木:そうですね。友達がその雑誌で写真を撮ったりもしていたのでその流れもあったんですけどね。

Celeina:元々、文章を書くことはお好きだったんですよね?

鈴木:携帯小説が流行っていた時代に、自分も日記を書いたりしていたので、馴染みみたいなものはありました。

Celeina:携帯小説読んでた!

タカノ:懐かしい、思い出しますね。

アイドルを楽しく応援するために、フェミニズムの視点から考える

Celeina:2022年に、和田彩花さんと共同特集編集された『エトセトラVol.8「アイドル、労働、リップ」』があります。こちらの特集、今思うと、すごい企画ですよね。この企画が生まれた背景は何だったんでしょうか?

鈴木:わたしはハロープロジェクトが好きで、あやちょ(和田のニックネーム)が所属していたアンジュルムというグループを、前身のスマイレージの頃からファンでもあったんです。ただアイドルを応援したり、自分が楽しんだりするためには、労働環境や、主に女性が性的に客体化されやすいというフェミニズムの視点からも考えないと駄目なんじゃないかなと思って。こういう話を『エトセトラ』の代表で編集者の松尾さんにしたら、和田さんと一緒に特集をやるのはどうかという話になったんです。

Celeina:なるほど。大事なトピックですよね。

鈴木:今は女性アイドルの話をしたんですけど、男性アイドルもいるし、そのファンにも男性と女性がいる。異性愛の文脈で、女性だからといって男性を応援する、男性だから女性を応援するというだけじゃなくて、憧れとか色んな視点もあるよね、ということを分かりやすい形で表現できないかと思って工夫しました。

タカノ:その特集内で行われたアンケートがすごく興味深いですよね。

鈴木:アイドルやアイドルだった方、アイドルと働いている方、アイドルのファンの方と3種類のアンケートを行ったんです。ただやっぱりアイドルの方達はの回答は思ったより少なかったんですね。去年の色んなニュースを考えても、匿名とはいえなかなか語りにくいというのはあるのかなと思いました。

Celeina:アイドル側からは語りにくいという現状自体を、これからどんどん変えていくっていうことはすごく大切なことだと思いますね。

タカノ:アンケート結果を見てみると、働きづらさみたいなものがにじみ出て来ていますよね。

鈴木:そうですね。あと、アンケートの良かった他の点は、ファンやアイドルの、色んな人が回答してくれたんですよね。海外から英語で回答してくれている人もいたり、同性愛の文脈でファンだっていう方もいたり。男性女性に限らず、ジェンダークィアやノンバイナリーといった、既存の性別に当てはまらない方もいて、色んな人たちがアイドルに興味があることが可視化されたのも良かったですね。

タカノ:質問があるんですけど、タイトルに「リップ」が入っているのはなぜですか?

鈴木:アンジュルムの元メンバーに、現在はME:Iで活躍されている笠原桃奈さんという方がいるんですけど、所属していた時に、リップの色についてファンの方から色々言われたことがあったんですよ。その時にあやちょが、ブログ上で「好きな色のリップを塗りなさい」ということを書いていたんです。ファンに受け入れられるように、見た目を気にしなきゃいけないお仕事でもあるけど、自分の個性をどうやって出していくかということは、その人が選んでいくことが大事なんじゃないかと思って。表象と表現の2つを合わせて「リップ」を入れました。

タカノ:これは他人事じゃないですよね。

鈴木:そうなんです。ただ、その笠原さんとあやちょのエピソードに限らず、いろんな意味としてみんなに考えて欲しくて、あえて抽象的な表現にしました。

雑誌の特集を作るきっかけにもなったSHINeeに注目

タカノ:書評や映画評のかたわら、小説もお書きになられているということですが、最新作はどんなお話なんでしょうか。

鈴木:2023年に文芸誌『すばる』の8月号で、『トランジット』という小説を書いたんです。説明が難しいので『すばる』からの説明を読み上げると、「化粧品製造販売会社の商品企画部で働く芙美はいくつかのSNSのアカウントをフォローしている。自分の別バージョンと思えるような人の投稿を読めば、自己嫌悪が誘発されることはわかっているのに開いてしまう」。そういう小説を書いたんだという感じですね(笑)。

Celeina:自分で書いたものって客観視するのが難しかったりしますよね。

鈴木:登場人物が何人か出てきて視点が入れ替わるので、まとめるのが難しいなと思っていたんですけど、1人の登場人物の視点からこういう紹介をしてくれたので、これを公式の紹介にしようと思います。

Celeina:最近は心が辛くなるようなニュースも多いですけれども、そんな中でみのりさんが注目されているエンタメ、カルチャーはありますか?

鈴木:わたしは日本語の情報を得たりエンタメや文化を消費したりするのがちょっと疲れてきているので、海外の作品を楽しむ機会が増えているんですが、この「アイドル、労働、リップ」という特集を作ったきっかけの1つでもあるSHINeeが好きですね。K-POPのアイドルも、労働環境や契約のことが色々と大変で、それがファンにも見えてきているんです。単に楽しむということだけじゃなくて、応援する時、楽しむ時に色んなことを考えさせてくれるきっかけをくれたグループです。2月に東京ドームでのコンサートがあって、3月にはデビュー15周年企画記念した映画が日本でも公開されるので楽しみです。

Celeina:テンション上がりますか?

鈴木:泣きそうな気持ちにもなるんですよね。引き裂かれるような感情を喚起してくれるグループですね。

タカノ:この流れでみのりさんが選んだ、この時間にみんなで一緒に聴きたい曲を流しましょうか。

鈴木:SHINeeのジョンヒョンさんという方が、実はお亡くなりになっているんです。ジョンヒョンさんとも一緒にお仕事をされたことがあるIUさんの曲で、勝手な推測になるんですけど、その死を悼んで歌った曲なんだと思っています。明るい気持ちにもなるし、引き裂かれるような感情も生まれるこの曲を選びました。IUで”Blueming”。

https://open.spotify.com/intl-ja/track/4Dr2hJ3EnVh2Aaot6fRwDO?si=12197fb0f30140c9

色んな人に引っかかる部分がある映画『ミツバチと私』のパンフに寄稿

Celeina:みのりさんは様々な作品にも言葉を寄せられているということですが、最近はどういった作品を扱ったんですか?

鈴木:スペイン映画『ミツバチと私』のパンフレットに寄稿をして、あとは一部、文言についても監修しました。

Celeina:『ミツバチと私』はどんなお話なんですか?

鈴木:スペインのバスク地方が舞台の映画で、夏休みに3人の子どもを連れて母親が実家に戻るというところから始まります。その末っ子が自分の性のありようについて違和感を持っているんです。ただ、その子どもだけでなく、母親の生き方だったり、おばあさんだったり、家族内でのさまざまな女性のあり方や、バスク地方に住んでいる女性たちそれぞれの生き方、きょうだいのやり取りも描かれているという映画です。

Celeina:興味深いですね。様々な視点で描くヒューマンドラマというか。

鈴木:トランスジェンダーという言葉にまとめきれないものが描かれていて、色んな人に引っかかる部分がある映画だと思います。

Celeina:要チェックですね。さあ「FIST BUMP」、グータッチでつなぐ友達の輪ということでお友達をご紹介してもらっているんですが、みのりさんがご紹介してくださるのはどんな方でしょうか?

鈴木:『NeoL/ネオエル』というWEBメディアの編集長をしている、桑原亮子さんです。

タカノ:一言で表すと?

鈴木:深夜のファミレス友達です。

タカノ:その辺りも明日聞いてみたいですね。明日は、カルチャーWEBマガジン『NeoL/ネオエル』の編集長・桑原亮子さんをお迎えします。

Celeina:「FIST BUMP」、本日は作家の鈴木みのりさんをお迎えしました。ありがとうございました。

GRAND MARQUEE

J-WAVE (81.3FM) Mon-Thu 16:00 – 18:50
ナビゲーター:タカノシンヤ、Celeina Ann

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