グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
10月19日は、「GraphersRock」名義で活動するグラフィックデザイナーの岩屋民穂さんが登場。グラフィックデザイナーになった理由やインスパイア源のスクラップブック、好きな映画についてなどのお話を伺いました。
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2つの思いの接点としてのグラフィックデザイン
Celeina(MC):まず、プロフィールをご紹介させていただきます。岩屋さんは、サイバーパンクやテクノカルチャーをベースに、「GraphersRock」名義でCDジャケットやアパレル、グッズ、広告媒体と多岐にわたるメディアでグラフィックワークを展開されています。主な仕事にでんぱ組.inc、tofubeatsのCDジャケットデザイン、またPUMAやAdidasでのスポーツアパレル、スニーカーのコラボレーションや、Jリーグチーム「ガンバ大阪」のユニフォームデザイン、さらにハーレーダビッドソンではバイクのデザインを担当されています。
タカノ(MC):私が昔から聴いていたMaltine Recordsにも関わられているとのことで感動してしまいました。皆さんも「GraphersRock」で検索していただいて、作品を見ながら「FIST BUMP」をお聴きいただけると、分かりやすいかなと思います。
Celeina:「GraphersRock」のウェブサイトを拝見すると、どのコラボレーションでも岩屋さん自身のカラーを落とし込んでいらっしゃるのが印象的です。グラフィックデザインに興味を持ったきっかけは何だったんでしょうか?
岩屋:僕は強く「グラフィックデザイナーになろう!」という感じではなかったんですが、幼少期から折り紙や工作、お絵かきなど、何かを作る遊びをしていて、将来的に「何でもいいから物を作る仕事をしよう」というのをずっと考えていたんです。そんな中、1985年に『つくば万博(国際科学技術博覧会)』があったことで、将来の予想やテクノロジーの素晴らしさ、技術の全能感のようなことを5歳か6歳くらいの時に植え付けられて、パソコンやテクノロジーに関心を抱くようになりました。
大学生くらいの時に、1990年代のDTPブームの中で、パソコンを使ってグラフィックをようやく制作できるようになったことで、大好きなパソコンを四六時中使いたいという思いと、何かを作る仕事がしたいという2つの思いが合致して、グラフィックデザインに至りました。
タカノ:『つくば万博』が原体験にあったというのは、岩屋さんの作品が持っているフューチャー感のような世界観と繋がりますね。
Celeina:パソコンやテクノロジーが好きだったとのことですが、作風に影響を与えたものはありますか?
岩屋:これも『つくば万博』からの流れになるのですが、1990年代はテクノやレイヴのカルチャーが日本に多く輸入されたタイミングなんです。ちょうどその頃に10代を過ごしたので、そのカルチャーが何かを制作する上での自分の原体験になっています。
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何でもないものに価値を見出していくのが面白い
Celeina:今日はスタジオに岩屋さんが制作されているスクラップブックをお持ちいただきました。
タカノ:まず1ページ目からチュッパチャップスのパッケージということで。
Celeina:このスクラップブックがインスピレーションの源になっているということですか?
岩屋:まさしくアイデア帳ですね。日々何でもないものをたくさん集めています。
タカノ:1個1個話を掘り下げながら進めたいところではあるのですが、時間が足りないです。
Celeina:これはアメリカのトイザらスのレシートですか?
岩屋:そうですね。それはレシートや伝票だけを集めているブックですね。
タカノ:これはアメリカ版のロト6ですかね?
岩屋:アメリカに行ったときに拾ったロト6の記入表です。
Celeina:飛行機のチケットなども収集されていますが、フォントなどが気になるということですか?
岩屋:チケットとかは作為的なものではないじゃないですか。作品として作られていない何でもないものに美しさを感じるというか。河原に落ちていた綺麗な石を拾うような感覚で、毎日作為のないものを沢山集めているんです。
タカノ:面白いです。恣意的に何かを狙って作ったものではない方が、意外と美しさが宿っていたりするみたいな。
岩屋:やはり価値のないものに価値を見出す楽しさがあるなということは感じています。
タカノ:やっぱり着眼点がすごいです。僕が見ているやつは、出前一丁の蓋のパッケージとか出てきました。
岩屋:これ、イギリスの出前一丁なんです。
タカノ:これイギリスのやつなんですか? めちゃめちゃ日本語で「出前一丁」と書いてある。すごく面白くてもっと見ていたいです。スクラップブックは日常的にパラパラめくったりして、インスパイアを受けたりしているのでしょうか?
岩屋:日常的に見ていますね。デザイナーの目線から見た時に、何か価値を見つけたいという気持ちもありますし、評価されていないものを発掘してきて収集することによって見えてくる美しさがあったり、価値のないものに価値を見出していくというのが面白いんです。
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仕事のBGMのプレイリストでムードを切り替える
Celeina:岩屋さんはお仕事の依頼を受けた際、最初はどこからスタートするんですか?
岩屋:テクノをはじめ音楽全般が大好きということもあって、仕事を受けたらまずその仕事のBGMのプレイリストを作ります。シリアスで堅い企業案件ならアンビエントミュージックやクラシック、現代音楽、派手めなエンタメの仕事ならEDMといった具合で、仕事の雰囲気に合ったプレイリストをかけて、自分の中のムードを切り替えて作業に取り掛かります。
タカノ:すごく面白いです。そのプレイリストは公開していないんですか?
Celeina:プレイリストと岩屋さんがやられたお仕事を紐付けていけば、答え合わせのようになって楽しそうです。
岩屋:プレイリストの公開はしていなくて、公開するということ自体思ったことがなかったのですが、確かに面白いかもしれないですね。
Celeina:今週は様々な方にこの質問をさせていただいているんですが、作品を作る上で一貫しているこだわりはありますか?
岩屋:その仕事において自分がデザインでやりたいことと、クライアントのやりたいことが重なる部分を見つけて、その仕事を全力で楽しむというのは大事にしています。自分が楽しくないと作品が世に出たときに楽しいと思ってくれる人もいないと思うので、どんな仕事でも自分が楽しいと思う部分を探して、それを追究していくという作業は一貫して行っています。
タカノ:すごく大事なことですね。昨日出演された吉崎響さんも「楽しくて、のめり込んでいるうちに仕事になっていった」というお話をされていましたが、やはり夢中になるということは大切ですね。
Celeina:「好きこそ物の上手なれ」ということですよね。さあここで1曲お送りしたいと思います。岩屋さんに、この時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでもらいました。どのような曲でしょうか?
岩屋:自分が一番影響を受けたアーティストの曲をかけたいなと思ったので、Aphex Twinというアーティストの楽曲から夕方の雰囲気にあった一番好きな曲を持ってきました。Aphex Twinで“Flim”。