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彫刻家を目指していたけれど気付けばレンガ職人に
タカノ:そういえばレンガってかなりレアだなっていう気がしたんですよ。で、実際にレンガ職人さんっていうのは、日本でそんなにいないんですよね。
高山:そうですね、建築に携わる我々のようなレンガ職人は、私が知ってる範囲では、5、60人。もう絶滅危惧種、レッドゾーンの職人なんですよね。
Celeina:すごいですね。本当に初心者で申し訳ないんですけど、レンガ職人って、具体的にはどんなことをされてるんですか?
高山:皆さんご存知の『三びきのこぶた』という、末っ子が非常に強いレンガの建物を作って最後にオオカミを追っ払うという話がありますが、その末っ子のこぶたちゃんみたいにレンガを建物の壁に積むという職人をしています。ですから、公共建築から民間、ランドスケープにかけて、建物の外壁にレンガを積むという仕事をしています。
Celeina:なるほど。『三びきのこぶた』では、あの子はすごく楽そうに、いとも簡単にレンガを積み上げていきますけども、現実には相当な計算と時間を積み重ねて、1つの建築ができあがるわけですよね。
高山:1から重力を味方につけて、1段目から高いところは1000段とか1500段ぐらいレンガを積んでいきます。非常に途方もない労力を要するんですけども、それが楽しくてやってるというのも、魅力があるからなんでしょうね。
タカノ:やはり数学的な技術というか、センスや知識みたいなものが必要になってくるんですか?
高山:なっていきます。構造的な要素を非常に求められる素材なので、やはり頭の中はある程度、数学力というか、数字力がないと、なかなか職人としては一流にはなれないというのはありますね。
Celeina:なるほど。
タカノ:高山さんはお祖父様もお父様もレンガ職人ということで、昔からレンガ職人になりたかったんですか?
高山:実はですね、レンガ職人になりたいとは、当時さらさら思っていなくて。高校を卒業した18歳の段階では彫刻家になりたかったんです。学校に行くとかではなくて、イタリアに行ってマイスターのもとで彫刻の修行を積みたいと思っていて。ただ行くにはお金を貯めなければいけないので、手っ取り早くうちの親父に「ちょっとアルバイトさせてくれよ」と。時はバブル絶世の頃だったので、建築業界がなかなか実入りが良くて、1年ぐらいアルバイトをさせてもらって、お金が貯まったので、「そろそろ親父、行くよ、じゃあね」と言ったら、「いや、ちょっと忙しいからあと半年ぐらい手伝ってくれないか」と。僕もしょうがないかと半年手伝って、それで半年経って、もういよいよ「親父、行くよ」って言ったら、「登志彦、俺を見捨てるのかよ」みたいなね。
タカノ:ずるずると(笑)。
高山:本当にずるずると。で、また半年経ったら、「登志彦、ちょっと言葉を覚えていった方がいいんじゃねえか」って。僕も単純なんで、そうだよな、ちょっと言葉は半年ぐらい覚えていこうと思って。それで騙され騙され、職人になったという。
タカノ:何かお父さんの戦略的な部分はあったかもしれない。
高山:多分、相当戦略性があったと思いますね。