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最前線を走る最新の『ガンダム』でありながら、随所に作家性も垣間見える
本作をテレビシリーズのアニメとして評価する際には、『ポケモン』シリーズなどで知られるキャラクターデザイナーの竹による現代的でかわいらしいキャラクターデザインが生き生きと動くアニメーション、そしてモノコックやビット兵器など、プラモデルや外伝の派生作品から生じた細かな設定をメカニックや物語に落とし込む手際など、アニメーションとしての圧倒的なクオリティの高さが維持されていたことに、まずは言及すべきだろう。
中盤の山場であるサイコ・ガンダムの大暴れやシャリア・ブルの操るキケロガのオールレンジ攻撃など、スタジオカラーらしい爆発の表現、立体感のある3次元の戦闘シーンも非常にゴージャスで、各話に強い印象を残した。オリジナル版由来の大量の設定を基にした物語はかなり駆け足で説明不足な点も見られたが、脚本家の榎戸洋司が得意とする少年少女の思春期と通過儀礼が、爽やかにエモーショナルな形で示されていた点も本作の大きな達成と言える。
彼の代表作『少女革命ウテナ』で登場した「薔薇の花嫁」というモチーフがララァ・スンというインスパイア元に再帰して用いられ、目覚めのキスをもたらす王子様の代わりに、初恋を得たマチュが自身の王子様であるシュウジにキスをして救う、という展開は、一人の榎戸ファンとして嬉しい変奏だった。