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『フェイクマミー』は「ニセママ」を透明化しない。替えの効かない存在を描くドラマ

2025.11.21

#MOVIE

©TBS
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ニセママを請け負う人間を透明化しない意識

薫の存在を必要とし続ける茉海恵といろは©TBS
薫の存在を必要とし続ける茉海恵といろは©TBS

「母親替え玉受験」から始まった『フェイクマミー』において、作り手の意識が徹底していると感じたことがある。それは、ニセママを請け負う薫を透明化しない、ということだ。

2024年に放送された桐野夏生原作の『燕は戻ってこない』(NHK総合)では、代理母が合法化された日本を舞台に、貧困から代理母業に手を伸ばした理紀(石橋静河)の生きざまが描かれた。もちろん、代理母の契約は口外してはいけないし、出産までの期間は家族にも秘密を貫かなければならない。厳しい制約の中で理紀は双子を無事に出産するものの、その後、彼女はルールから外れた衝撃的な結末を選ぶ。

理紀が違法とも言える決断をせざるを得なかった理由のひとつには、彼女を透明化しようとするクライアントや世の中への抵抗もあったのではないか。『フェイクマミー』の薫は代理母ではないが、ニセママ契約もまた、花村薫という個人を消し、「いろはの母・日高茉海恵」として生きることを求められるはずだ。つまり、ニセママ契約は、花村薫という人間を透明化することを前提に成り立つ契約なのだ。薫は理紀のように息を潜めて暮らしているわけではないが、だからといって、ニセママ契約上、基本的には「花村薫」として堂々と日常生活を送ることは叶わないのである。

だが、世間からは透明人間状態になっていても、薫の一番近くにいる茉海恵といろはだけは、彼女の存在を必要とし続ける。かつて働くママのサポートに回され、「独身で子どものいない女性社員は多様性に含まれない」現実を目の当たりにした薫。大手・三ツ橋商事退職後の再就職もうまくいかず、社会から「求められていない」と感じていた彼女を、茉海恵といろはだけは、純粋に肯定しつづけて来たのである。

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