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OGRE YOU ASSHOLEが彩るマジックアワー
さて、オウガのセット。前日に配信開始されたばかりの新曲“偶然生まれた”でオープニング。スローでシンプルに削ぎ落としたようなサウンド。途中まで馬渕啓はシンセに向かい、ギターも弾かない。出戸学の歌う言葉は、進む時間や広がる空間のままならなさを淡々と眺めるような光景を示唆する。ストイックだがサイケデリックな約9分。そこから勝浦隆嗣と清水隆史のリズム隊に導かれて“ムダがないって素晴らしい”へ、そして“素敵な予感”。このぎゅっと引き締められながらの開放を繰り返すような矛盾スレスレのコントラストが、まさにオウガの快感。それはそのまま緑のすり鉢のようなこの小さな会場を大きく広がる外界へと解き放つ化学変化にもつながってゆく。



2023年リリースの新曲“待ち時間”“家の外”から“記憶に残らない”“朝”“見えないルール”への展開で一気にラストまで行ってしまうわけだけど、果たして曲間なんかあったっけ? と錯覚してしまうほどの陶酔感だった。オウガ的な解釈による四つ打ちと断続的なパルスは、夕暮れどきを演出するメロウという感覚とは真逆なはずの厳しさなのに、聴く者を闇に酔わす。そして「踊る」というより「揺れる」、「揺れる」というより「震わす」。気がつけば“見えないルール”の終盤ではみんなめちゃめちゃ踊っていたけどね。でも、日もとっぷりと暮れてきた“朝”中盤あたりまでの、「踊りたくても踊らせない」っていうか、観客それぞれがこの森林地帯に囲まれた一本ずつの木になってただブルンブルンと震えているような眺めも、とても記憶に残るものだった。あれは、たぶん、オウガに誘われて別世界の入り口から抜けた場所にある光景だった。




そしてアンコール“バランス(twilight ver.)”は、まさにこの場所、このマジックアワーを完全にとらえた選曲。終演後のどんなアナウンスよりも、この日のイベントの終わりを意識させたと思う。そして、感覚に残る音のこだまがまだ消えないうちに、本当にするするとあたりは闇に包まれてしまった。この時間の魔法をオウガが知っていたのなら、それこそホームゲームってことだ。



終演後、富士見駅近くの「茶虎飯店」で食事をしての帰り道。ヘッドライトに照らされて闇に浮かび上がる鹿を何匹も見た。ここから先は彼らの時間。おじゃましました。鹿たちも「今日の昼間はなんだか知らない音がしていたね」と話したりしていたかもしれない。

『LIQUIDROOM 20th ANNIVERSARY OGRE YOU ASSHOLE LIVE』

日時:8月3日(土)
会場:恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:STANDING ¥5,000税込 (1D代別)
チケット販売URL:https://eplus.jp/sf/detail/4093910001-P0030001
<問い合わせ>
LIQUIDROOM 03-5464-0800
OGRE YOU ASSHOLE『偶然生まれた』

配信日:2024年5月10日(金)
配信URL:https://linkco.re/pvVzbqxZ