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21世紀のコーネリアスとアンビエント。人生も半ばを過ぎて語る、YMOの3人に思うこと

2024.6.28

#MUSIC

まだ見ぬピークの先へ。人生も半ばを過ぎ、YMOの3人にいま思うこと

―この前、高橋幸宏さんのお話をしたとき(※)、Sketch Showの存在はYellow Magic Orchestraの3人がまた再結集するきっかけになったとおっしゃっていましたよね。当時、アンビエント的なもの、エレクトロニカ的なものに世代を超えて共演できる器というような側面があったんでしょうか?

小山田:Sketch Showがきっかけで僕もあの3人の仲間に入れてもらえて。僕も含めていいのかわかんないけど、あのころ特定の人たちが共有できるような何かがあの音楽にはあったんだと思いますね。坂本さんもあの2人と合流するのも、そもそも細野さんと幸宏さんが一緒にバンドやるのも結構久しぶりで。

※『高橋幸宏: 音楽粋人の全貌』(2024年、河出書房新社)のインタビューのこと

Sketch Show『tronika』(2003年)に収録されたCorneliusによるリミックス

―Sketch Show自体、自然発生的な側面もありましたものね。共有していたものは何だったでしょうか?

小山田:音楽的には「ミニマルで、繊細」というような要素だったんじゃないかな。あと2000年代頭って、9.11もあって競争的なものからちょっと時代が変わっていったタイミングだったじゃないですか。

1990年代、坂本さんはニューヨークでハウスをやったりしてたけど、エレクトロニカはミニマルミュージックとか現代音楽の文脈からも近いところにありますよね。細野さんと幸宏さんの場合はフォーク的な繊細さが、エレクトロニカとも親和性が高かったんだと思いますし。たぶん3人の場合、いろんな文脈からエレクトロニカにたどり着けた側面もあったんじゃないですかね。

Sketch Show『LOOPHOLE』(2003年)収録曲

小山田:あとは年齢的な部分もある気がします。Sketch ShowとYMO再々結成のあいだの2000年代半ばって、細野さんが60手前ぐらいで、坂本さんと幸宏さんは今の僕よりちょっと下ぐらいで、53〜54歳ぐらいかな。だからライフサイクル的にも1回落ち着いてるっていう。

―音楽的にも、時代的にも、それぞれのライフサイクル的にもいろんな巡り合わせが重なったんですかね。

小山田:1990年代、YMOがもう一度集まったとき、あまり共有できるところがなくてビジネス主導で動いていた部分があったのがよくなかった、っていうようなことを当時、3人みんな言ってたんですよね。そのときと比べて純粋に音楽を共有して、普通にご飯一緒に食べるようになったねって当時言ってました。

そのころ、いまにして思えばまだ3人とも若いなと思うんですけど、「老いが〜」とか口にし出してたんですよね。タバコをやめたりとか。だからいまの状態で話したいですよ、こっちは老人初心者だから(笑)。

―老いを迎えるにあたって、小山田さんはどう考えているのでしょうか? これから枯れていけばいいですかね。

小山田:どうなんですかね。本当に難しいですよ、この初老問題は(笑)。

―『POINT』の頃、岸野雄一さんにインタビューしてもらった際(※)、「詫び寂びを感じる」とおっしゃっていたのを覚えています。小山田さんは若くしてその境地にいたっていたのかもしれません。

小山田:いや、もちろん意識していた部分もありますけど、所詮30代の若造が考える侘び寂びですから(笑)。坂本さんの『out of noise』(2009年)とか『12』(2023年)って、侘び寂び的な感じがすごくあるじゃないですか。あれは本当に真に迫ったものを感じるし、ああいうものと比べると、僕のは全然まだ子どもです(笑)。

―真に肉体の衰えの元ではないと。

小山田:全然次元が違うんじゃないですかね。

※雑誌『STUDIO VOICE』2001年11月号「特集 ポストテクノ/エレクトロニカの新世紀」掲載インタビューのこと

坂本龍一『out of noise』収録曲。同作に小山田圭吾は3曲参加している

―人生も半ばを過ぎ、私どもが死に近づいているのかもしれません。

小山田:でも、そのことによるリアリティってあると思う。

―坂本さん、『out of noise』以降の作品がすごくいいですよね。

小山田:大好きです。

―サウンドは削ぎ落としていくんだけど個々の音が結晶化して、全体でひとつの空間を形づくっている。最後まで挑戦的だったと思います。

小山田:うんうん。

―ということをふまえると、小山田さんのピークもまだまだ先なのだと思います。

小山田:そうありたいですね。

Cornelius
『Ethereal Essence』(CD)
2024年6月26日(水)発売
価格:3,300円(税込)
WPCL-13566

1. Quantum Ghost
2. Sketch For Spring
3. Heaven Is Waiting
4. サウナ好きすぎ、より深く
5. Xanadu
6. ここ
7. Step Into Exovera
8. Forbidden Apple
9. Melting Moment
10. 告白 – Cornelius ver.
11. Mind Matrix
12. Windmills Of My Mind
13. Thatness And Thereness – Cornelius Remodel

https://wmg.jp/cornelius/discography/29449

Cornelius
『Selected Ambient Works 00-23』(カセット)
2023年10月6日(金)発売
価格:3,410円(税込)

[Side A]
1. Quantum Ghosts
2. Wataridori 2
3. Too Pure
4. Windmills Of Your Mind
5. Tokyo Twilight

[Side B]
1. 霧中夢 – Dream in the Mist
2. Summer Waves
3. Take Me To The Green World
4. Loo
5. Tone Twilight Zone

https://store.wmg.jp/products/3567

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