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「大切なことは半径5m以内にあるので、SNSを見てる場合じゃない」(飯塚)
ー今回はCOTTON CLUBの20周年公演でもあり、なおかつ今までで一番ミニマムな2人芝居という形式です。
飯塚:最大のチャレンジですよね。ごまかしが効かない。2人芝居ってかっこいいじゃないですか。2人だけでどこまでもいろんな世界にいけるし、どこかで挑んでみたいと思っていて、それが今だったという。
あと、私事ですけど育休明けなんです。下の子が最近1歳になって、家族の変化を間近で見られたのはよかったなと。そういうのを経て、今何が書けるのか自分でも楽しみです。
ーvol.05も家族の話でしたが、vol.06はさらに焦点が絞られて「父と息子」がテーマになっているそうですね。
飯塚:下の子が男の子なので、影響は大いにありますね。上は女の子なので、全然違うんだなと感じましたし。
ーお2人は3代にわたる父子を交互に演じられるんですよね。
中川:聡さんと親子役をやったことはあるんですけど、今回も楽しみです。実際の時間以上の時間を体験してもらえるのが飯塚さんの脚本の好きなところで。時計を見たら物理的な時間はそんなに経ってないけど、すごく遠くまで連れて来られたなみたいな。時間の変化が今回の大きなテーマの一つかなと思うので、そこを感じながらやりたいなと思ってます。

飯塚:2人芝居で100年を描くというのが、自分に課した挑戦で。まだ脚本が完成してないので、100年描き切れるかまだわからないんですどね。
ちょっとゴチャゴチャしたものに疲れたというのもあるんです。育休を取ったと言いましたけど、その間に1本だけ映画を撮らせていただきました。その作品ではパソコンやスマホの画面を撮ることをやめました。現代の作品は、それがないと成立しないものが多すぎると思っていて。僕はあんなものはスクリーンに映したくないんですよ。ただの文字じゃないかと。スクリーンはもっとすごい景色を映すためにあると思っているので。
ー確かに、何かを検索するシーンなんかは必ずと言っていいほど出てきますね。
飯塚:今って、何をするにもまず検索するじゃないですか。でも、大切なことはそこに載ってないと思うんですよね。それが今回「嘘」をキーワードの一つにした理由です。大切なことは半径5m以内にあるので、SNSを見てる場合じゃないということに、育児を通して改めて気付いたんですよね。みんなもっと畑とかいじった方がいいんじゃないかと(笑)。
ースマホを捨てて土をいじれと。
飯塚:本当にそうなんですよね。今回「人間より牛の方がすごい」というセリフを書いたんですけど、牛は草を食べて、糞はまた草木の栄養になって、循環させているわけですよ。加えて牛乳もくれるし、ミラクルだと思うんです。人間はそんなことはできないし、すごいじゃないですか。そういう循環を描きたいなとは思ってるんですよね。
電車などでも、スマホを必死に見てる人への違和感が年々増していて。『コントと音楽』はその対極だと思うんですよ。目の前で体験するということなので。
ー目の前でやるからお客さんも緊張もするし負荷もかかるけど、その分見返りがあるというか。
飯塚:そうですね。同じ俳優が若者の役も年取ってからの役も演じて、時空の繋がりみたいなものを表現できるというのも、シンプルな生の舞台だからこそですし。