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映画に登場するキャラクターたちとの巧みなリンク

なんといっても物語の後半で驚かされたのは、映画に登場したキャラクター同士の関係性との巧みなリンクだ。奏はめぐるの恩師に、千早は凪の恩師に、太一は風希を指導し、綿谷新(新田真剣佑)は懸心を教えている。めぐると凪、風希と懸心の対比には、奏と千早、太一と新の関係性が重ねられているのだ。
奏は、高校時代、千早の力強さに影響されてかるたを始めた。クイーンになる夢を叶えた千早に対し、読手の夢を叶えられていないことに負い目を感じていたという点で、千早の影に隠れていた人物だ。そして、そんな奏に師事するめぐるは、常勝チームとなった瑞沢高校で主力として活躍する凪の影に隠れ続けてきた。
また、太一はライバル関係にあった小学生の頃に嘘をついて新のメガネを隠したことに負い目を感じていた。太一が指導することになった風希も、ボクシングから逃げるために、右手の怪我が長引いていると父に嘘をついていた。風希と懸心のライバル関係を描いているだけでなく、新に対する太一のコンプレックスを風希のコンプレックスに重ねているのも興味深い。
『ちはやふる-めぐり-』は、令和の高校生を丹念に描きながらも、かつて高校生だった大人たちが、自分の過去の後悔を下の世代への指導を通じてほぐす物語になっているのだ。