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ライバルの関係性に感じる作り手の敬意

本作には、対比となる関係性が数多く描かれている。めぐると、幼馴染だったが仲違いをしてしまった月浦凪(原菜乃華)。良きライバル関係となった風希と、瑞沢高校のエース・折江懸心(藤原大祐)。そして、兄弟である梅園高校の奥山春馬(高村佳偉人)と、北央学園の主将・奥山翔(大西利空)。かるたを始めたばかりにもかかわらず抜群のセンスを持つ風希と、何よりかるたが好きでありながら、実力で風希に追い抜かされメンバーを外れた与野草太(山時聡真)の関係も良い対比となっている。
第9話は、奥山兄弟と、風希と草太の関係が丁寧に描かれる展開となった。奥山兄弟の関係では、兄・春馬が弟に一歩も引かない気迫を見せ、その姿に弟・翔がわずかな喜びを見せる。翔を演じた大西の、笑みを含んだ表情や「おせえよ」の一言の匙加減が絶妙なシーンとなった。風希と草太の関係では、悔しさを一切見せずに風希にプレイヤーとしての席を譲っていた草太が、右手を負傷した風希に代わって試合に出場した場面。試合の途中、風希の得意札である「しら」を抜いた後、草太が発した「抜いた!」には、一入の思いが込められているように感じた。
対比をバリエーション豊かに表現しつつも、安易な対立関係に持ち込まないストーリーテリングには、現代を生きる高校生一人ひとりへの敬意も感じさせられる。