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内面の変化の様子を描き出すリリック
アルバムの他の楽曲をとっても同様に、リリックに描き込まれているのは、誰かと通じ合うことで内面に沸き上がる焦ったい気分やほろ苦さなど、自分の心身に起こる変化について、だ。とはいえ、他人から向けられる眼差しへの猜疑心をうかがわせるなど(例えば“Blouse”)内省的な印象の強かった前作『Sling』を思うと今作での彼女のこうしたマインドの変容は意外にも感じたのだが、いずれにしても、YouTubeのアルゴリズムでバイラルしてしまったというシーンへの登場の経緯や、父親のコネで業界に持ち上げられたのではといった誹謗など、周囲からの意図しない視線を潜り抜けていく中で彼女が自身の身体と心を禁欲的に律していた部分がこれまではあったのだとも、翻って改めて理解することができる。
だからこそ、<ときどき ある人にだけセクシー / 望むのはそれだけ>(“Sexy to Someone”)とも歌われるように、今作は自身の心身(セクシャルな側面も含め)の解放を、段階的に自分に認めていくプロセスそのものだとも位置付けられるだろう。