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空港跡地に誕生したオープンエアクラブが提唱する多様性

ベルリンではここ数年、街の中心部から郊外へとカルチャー発信地が移行し、要塞跡地や工場跡地に新しいクラブやイベントスペースが次々と誕生している。2020年11月に閉鎖したテーゲル空港跡地に昨年9月にオープンしたばかりのオープンエアクラブ「タービュランス(Turbulence)」もそのひとつだ。
「タービュランス」ができたのは、多くのファンに惜しまれながら72年という長い歴史に幕を閉じたテーゲル空港の社員用食堂の跡地。その跡地の一部を利用し、昨年9月に誕生した。様々なカルチャーに精通したコレクティブが運営に携わっており、スタッフのDIYによる内装やPanorama Bar(パノラマバー)と同様のサウンドシステムStudt Akustikを不要となったクラブから譲り受け、改修して使用するなどサステナブルな取り組みも行っている。オープンからわずか1年で注目を集めている同クラブについて、PR担当のアレックスに尋ねた。
ーテーゲル空港跡地にオープンエアクラブ「タービュランス」をオープンさせるに至った経緯を教えて下さい。
アレックス:去年の夏の初め頃に、ベルリン市がテーゲル空港の跡地を利用してクラブカルチャーを確立し、運営するコレクティブを探していると知りました。コロナ禍の影響がまだ残っていましたが、私たちが長年夢見ていた機会がついにやってきた瞬間でもありました。オープンまで時間がかなり限られていたので、自分たちのネットワークを駆使し、すぐに新しいコレクティブを結成して、コンセプトと申請書をまとめました。コレクティブのメンバーは、ベルリンのアート、パフォーマンス、クラブなど、様々な分野で活躍している知人たちです。25組以上の応募の中から選ばれ、現在に至ります。

ー野外フェスのような雰囲気とオリジナリティー溢れるステージデザインが素晴らしいと思いましたが、特にこだわった点はどこですか?
アレックス:ステージのデザイン、デコレーション、鉄や木を使用したフロア、バックステージなど、すべてのプロセスを通じて、誰もが自分の強みや興味を活かし、自分の可能性を実現できる場所が「タービュランス」です。ある日突然、古いラーダ車がデコレーションとして現れたり、美しい座席エリアを作り上げたり、トラックで巨大な木を運び込んだり、みんなで協力し合い、自分たちの手で作り上げました。これらの作業は、誰もが自分らしくあり、誰でも参加できるインクルーシブな空間を作ることと密接に関連しています。私たちは、アクセシビリティ、反差別、意識向上、地域社会との連携、多様性を最も重要視しています。このように、明確な価値観と差別行動に対するゼロトレランスポリシーを持つことによって、2024年におけるクラブカルチャーが機能するものだと思っています。

ー女性アーティストやクイアアーティストのラインナップが豊富ですが、出演アーティストはどのように決めているのですか?
アレックス:コレクティブで具体的なアイデアやコンセプトについて決定し、出演アーティストを決めています。決して妥協せず、親切で思いやりのある人々と協力することに重きを置いています。なぜなら、単発のイベントやそこに出演するアーティストとは非常に短い期間のコラボレーションとなりますが、このイニシアティブこそがコレクティブの一部になり、イメージに繋がります。コンセプトと合い、人間レベルが高く、特定の雰囲気を持つアーティストや個人的にブッキングしてみたいアーティストをミックスして選んでいます。

ーベルリンのテクノカルチャーがユネスコの無形文化遺産に登録されたことについてどう思いますか?
アレックス:世界中がベルリンのクラブカルチャーに注目している中で、ベルリンの評価が確固たるものであると証明したことになります(テクノはベルリンが発祥の地ではないですが)。クラブカルチャーが社会生活の一部として認知され、商業的な目的を超えた空間やプロジェクトとして創造していくことの重要性を強調していると言えます。私たち「タービュランス」はその代表例であり、ベルリン州文化局、ベルリン都市実践プロジェクト基金事務局、文化教育・文化相談基金、Clubcommission e.V.、Kulturraum Berlin GmbHによる資金援助と私たちをホストとして選んでくれたことに非常に感謝しています。
―今後の予定しているプロジェクトや目標を教えて下さい。
アレックス:今年は、Aurora Kollektiv、Dry、Femme Bass Mafia、Hyper Real、RAIDERSなどのコレクティブと協力し、月に2、3本のパーティーやコンサートを予定しています。また、展示会やパフォーマンス、演劇などの音楽以外のイベントも企画しています。ベルリンだけにとどまらず、ドイツ国内やヨーロッパ各地のフェスティバルでショーケースを開催する予定もあります。日本での開催にもとても興味があります。もし、私たちとコラボレーションしてくれる日本のプロモーターがいたら、是非一緒にやりましょう!
