『スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー』シーズン2が、2025年4月23日(水)よりディズニープラスにて配信開始される。同シリーズを「スター・ウォーズ」フランチャイズ屈指の傑作と考える筆者が、シーズン1を振り返りつつその魅力を紹介する。
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シリーズ未見の方にも見てほしい、大人が楽しめるエンターテイメント
この記事をお読みの方は、「スター・ウォーズ」(以下SW)シリーズにどのようなイメージをお持ちだろうか。もしも、子供向けで物足りない、古くてチープ、あるいはオタク向けでややこしそう、作品数が多く手を出しにくい、といったイメージをお持ちなら、そんな方にこそぜひ見ていただきたいのがドラマシリーズ『スター・ウォーズ:キャシアン・アンドー』だ。
同作は2022年にシーズン1(全12話)が公開され、このたび4月23日(水)からDisney+にてシーズン2の配信がスタートする。『天国の口、終りの楽園。』などで知られるメキシコ人俳優ディエゴ・ルナが主演し、『ボーン・レガシー』『フィクサー』のトニー・ギルロイが原案・製作総指揮を務めている。
『キャシアン・アンドー』を「SW」と縁遠い方にこそお勧めしたい理由のひとつは、鑑賞に前提知識がいらないことだ。本作には、例えば「フォース」や「ジェダイ」といった専門用語がほぼ登場しない。シリーズの設定やキャラクターを知らなくても、独立したドラマとして楽しむことが可能なつくりになっている。また、後述するように、「SW」シリーズへの導入作としても非常に優れている。本作から物語の続きを追いかけていけば、シリーズにスムーズにのめり込むことができるはずだ。
とはいえ、私が本作をお勧めする最大の理由は、シンプルに本作が面白いからだ。『キャシアン・アンドー』は、息をつかせぬ展開を持ったスリラーであり、人間や社会を巧みに描いたドラマであり、大人が楽しめる骨太なエンターテイメント作品なのだ。まずはストーリーを簡単に紹介しよう。

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圧政への抵抗者たちを主人公に、正義の多義性や葛藤を描く
遠い昔、はるか彼方の銀河系で。銀河の支配を企む元老院議長は、共和国の危機を煽り、自らの権限を強化する動議を承認させて敵対勢力を殲滅。共和制は帝政へと移行し、恐怖政治が敷かれることとなった。
帝国の支配がはじまって10余年後、廃品回収をして細々と暮らす青年キャシアン・アンドー(ディエゴ・ルナ)は、ひょんなことから横暴な警備員を誤って殺めてしまう。逃亡の道すがら、盗品の闇物資を売却するためバイヤーに接触するが、バイヤーはなぜかキャシアンの過去を熟知しており、彼の逃亡の手助けをする。ルーセン・レイエル(ステラン・スカルスガルド)というその男は、帝国への反乱分子をまとめるリーダーであり、キャシアンを反帝国の活動に誘い込む。ルーセンの掲げる「大義」に説得されたキャシアンは、帝国の基地から大金を盗み出すミッションに参加することになる——

大義のためには味方の犠牲も厭わないルーセン、自分は役目を終えた後に口封じのため殺されるだろうと予期しているキャシアン、そして、急遽現れた新参メンバーを訝しむ、どうもそれぞれ異なる思惑や背景を抱えていそうなミッションのメンバーたち。そこに、彼らを追う帝国側の面々や、キャシアンの事件をきっかけに危険に晒されることになってしまった彼の義母や友人たちなど、さまざまなキャラクターの心情と行動が絡み合い、物語は複雑に展開する。
冒頭の予期せぬ殺人のシークエンスに象徴されるように、本作では人命の重さや、戦いの(物理的な)痛さ、戦いに直面した人たちが持つ恐怖が描かれる。これは、基本的に「宇宙を舞台にした西部劇+黒澤映画」の活劇であり、シューティングゲームのようにどんどんと人が倒れ戦闘機が爆発する「SW」シリーズの中では、異色の演出だ。
また、反乱を起こす側を主人公としていながらも、不当な圧政に対抗する手段として武力を用いることに対して、登場人物の間には温度差があり、それぞれに葛藤もある。なおかつ、抵抗のための活動は反対側から見ればテロ / ゲリラに他ならないということも、しっかりと描写される。さまざまな立場での正義の多義性が、物語に厚みをもたらしているのだ。
