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マユンキキが語る、人間の複雑さに向き合う意義。国際芸術祭『あいち2025』の新作とは?

2025.9.25

国際芸術祭『あいち2025』

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亡くなった人との関わりで、死への恐怖が消えた経験

そのように祖父の複雑な姿を追いかける過程で出会ったのが、飯田線沿いの天竜峡だ。マユンキキは、その激流と断崖の景色は、「地元・旭川のカムイコタン(神居古潭)に似ている」と振り返る。きっと祖父も天竜峡を見て、カムイコタンのようだと思ったのではないか——それが彼女の天竜峡への最初の印象だったようだ。

マユンキキ:私と祖父、そして天竜峡とカムイコタンという二つの土地が結びついたときの感覚が忘れられなかった。時間や土地といった遠くにあるもの同士を繋げたいという思いから『クㇱテ』を創作しています。

カムイコタンは、石狩川が山地を削ってできた渓谷なので、天竜峡と同様に急な地形で事故が多く、毎年旭川のアイヌの人々が儀礼をしに行く場所です。私が見た景色と祖父が見た景色は、100年くらいの時間のズレはあるけれど、大きくは変わっていないはず。リサーチを重ねる中で祖父の思い出が増えていったように、亡くなって今はいない人とでも新たに関係を築くことができる。そう考えることで、死への恐怖が和らいでいきました。

大きな夢だけど、という前置きをしつつ、いつかは「橋」を建てたいとマユンキキは語る。作品を制作し発表するのも、見えない橋を架けているようなものなのだ。距離が遠くて関係がないと思われている二つの場所——近代化以前と以降、過去と未来、上流と下流、アイヌと和人、先祖と子孫、演者と観客といった、一見すると対極にあり不可逆と認識されているものを繋ぐ作品となるのだろう。

天竜峡リサーチ時の写真

作品のタイトルは、どういう意味を持つのか聞いたところ、「クㇱ / kus」は、アイヌ語で「〜を通る」という、「クㇱテ / kuste」は「〜を通らせる」という意味の言葉だと教えてくれた。

マユンキキ:舞台では、観客が演者をその場に通らせることもあれば、演者が観客を通らせることもあり、相互関係が成り立ちます。その相互関係を、タイトルに含ませました。

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