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「祖父の人間らしさに向き合い、複雑な姿を追いかけたい」
『クㇱテ』は、土地のリサーチを通して得た、亡き祖父と繋がる実感をもとに創作された音と光と影のパフォーマンス作品だ。「JR飯田線開通が本州の近代化の一助になったということと、祖父がアイヌであることの間に矛盾を感じる」とマユンキキは指摘する。
マユンキキ:当時は最善だと思われたであろう近代化というのは、アイヌが植民地支配を受けた苦しい歴史と結びついてしまう。祖父の存在には、誇らしさを感じると同時に複雑な思いがあります。飯田線沿いの地元の人に祖父のことを尋ねると、素晴らしい功績を口々に話してくれました。でも、親族から聞いた話では、祖父は怒りっぽかったり喧嘩っ早かったりした一面もあったようで。
祖父の功績は、合唱劇や児童書にもなっているので子供の頃から大まかには知っていましたが、身内の私が、祖父をただ素晴らしい人物と捉えるのは違うと思います。祖父の偉業にだけ焦点を当てて、わかりやすく崇高な存在として祀り上げるのは簡単ですが、一気に祖父という存在が平面的になってしまう。むしろ私は祖父という一人の人間に向き合い、複雑な姿を追いかけたいと思いました。
