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マユンキキが語る、人間の複雑さに向き合う意義。国際芸術祭『あいち2025』の新作とは?

2025.9.25

国際芸術祭『あいち2025』

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川村カ子トは、旭川アイヌのリーダーであり、JR飯田線開通に尽力した鉄道測量技師だった人物だ。飯田線の開通は本州の近代化の一助を担っており、その功績が評価されてきた。

旭川アイヌの音楽家・現代美術家であるマユンキキは、自身の祖父である川村カ子トに向き合う中で、外部の人たちから伝えられる祖父の偉大な部分だけではなく、直接家族から聞いていた祖父の異なる一面も伝えたいと思うようになったという。それは『あいち2025』で発表される作品に反映されている。

『あいち2025』では、マユンキキ個人としては現代美術の部門に出展、マユンキキがこれまで共演 / 共作を行なってきたメンバーとともに結成した「マユンキキ⁺」としてパフォーミングアーツ部門に参加する。「マユンキキ⁺」の稽古場に伺い、マユンキキがこれまで重ねてきたリサーチをもとに辿った、生前の祖父や周囲の人の記憶について語ってもらった。

自分の肉親という身近な存在の人間らしさに向き合うことで、過去を立体的に捉えること。つまり、現在の時点で知られている結果としての情報だけではなく、さまざまな人の複雑な事情が重なっていた過程を知るということは、どうしてもわかりやすい方向に流されてしまう傾向にある私たちが、川の流れに負けない杭のように、自分の足で立ち続けるための第一歩かもしれない。

現代美術『クㇱ』とパフォーミングアーツ『クㇱテ』は対となる作品

旭川アイヌの音楽家・現代美術家であるマユンキキは、声や語りを中心としたパフォーマンス作品を国内外で展開してきた。北海道から東京、シドニーまで幅広く活動し、どの作品もアイヌというルーツに向き合いながら、あくまで個人の視点での表現を貫いている。

マユンキキ
1982年チカプニコタン、ヤウンモシㇼ / 近文コタン、北海道生まれ。ヤウンモシㇼ /北海道拠点。アイヌの伝統歌を歌う「マレウレウ」「アペトゥンペ」のメンバー。2021年よりソロ活動開始。2018年より、自身のルーツと美意識に纏わる興味・関心からアイヌ女性の伝統的な文身「シヌイェ」の研究を開始。現代におけるアイヌの存在を、あくまで個人としての観点から探求し、表現している。

2025年9月13日から11月30日まで開催される『あいち2025』では、インスタレーション作品『クㇱ』のほか、それと連動する形で、特別編成の新ユニット「マユンキキ⁺」として音と光と影を用いたパフォーマンス作品『クㇱテ』を上演予定。『クㇱテ』は、姉のレㇰポとのユニット「アペトゥンペ」や、音響設計のWHITELIGHT、アイヌ影絵のコラボレーターであるhoshifuneの小谷野哲郎・わたなべなおか、音楽家で、マユンキキとのアンビエントユニット「西瓜兄妹」の相方でもある廣瀬拓音等が参加している。マユンキキが信頼する仲間たちによる、綿密なリサーチをもとに構成される複層的なパフォーマンス作品だ。

稽古場に伺った際は、hoshifuneの小谷野哲郎・わたなべなおかとマユンキキが打ち合わせをしていた

対になるという、『クㇱ』と『クㇱテ』の二つの作品の背景には、マユンキキの祖父である川村カ子トの存在がある。川村は昭和初期、日本の鉄道敷設史上最大の難所のひとつとされた三信鉄道(現・JR飯田線天竜峡駅〜三河川合駅)の測量技師として活躍し、同時に旭川アイヌのリーダーでもあった人物だ。

マユンキキ:私が生まれる前に祖父は亡くなっていたので、さまざまな文献を読んだり、家族などに話を聞いたりする以外に、祖父を知る方法はありませんでした。2年前、祖父が敷設に携わった飯田線を初めて訪ねてから(※)、リサーチを重ねるなかで祖父にまつわる思い出が少しずつ増えています。

※『あいち2025』パフォーミングアーツプログラムブックに掲載されている「クㇱテマッとたたく少年」(山川冬樹著)によると、マユンキキの音楽仲間である山川がマユンキキを「三信鉄道で行く、二泊三日・天竜峡の旅」に誘ったのが、マユンキキが天竜峡を最初に訪れたきっかけだった。

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