堺雅人主演の日曜劇場『VIVANT』(TBS系)第2シーズンがいよいよラストスパート。
アジア大会による2回の放送休止を経て、11月8日(日)の最終回(第24話)まで6話を残すのみとなった。
中国の裏組織「シンシー」に拘束された黒須(松坂桃李)たち別班員を助けるため、主人公・乃木(堺雅人)のもとには、弟・ノコル(二宮和也)とテント、そして、まさかの復活を遂げた新庄(竜星涼)やチョッキー(タナパック・ジョンジャイパー)も集結。
同じく拘束された野崎(阿部寛)とドラム(富栄ドラム)の狙いも気になる本作の第16話から第18話について、ドラマ・映画レビュアーのuriがレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
INDEX
『VIVANT』視聴をさらに盛り上げる『悪役会議室』という仕掛け

『VIVANT』第2シーズンが圧倒的な熱量で視聴者を魅了し続けている。第18話までの世帯平均視聴率は全て15%以上をキープしており、TVer再生回数も第11話~13話は3話連続で1,000万回を突破した。さらに、Xでは8週連続で世界トレンド1位となるなど本作への注目度の高さがうかがえる。
そうした熱狂の裏で、思わぬ角度から作品の勢いを加速させているのがTBSラジオ『VIVANT 悪役会議室』である。
第1シーズンで、主人公・乃木憂助(堺雅人)に敗れ去った元「テント」のモニター・山本巧(迫田孝也)、元バルカ共和国外務大臣・ワニズ(河内大和)、元ベレール興産代表・ゴビ(馬場徹)。そんな「悪役」3人が黄泉の国や監獄からとあるラジオブースへと集結し、自らを追い詰めた乃木たちの動向を監視しながら次なる復讐の機会を狙うというコンセプトの配信番組なのだが、これがドラマの連動企画として巧みな仕掛けとなっているのだ。
ドラマ本編終了直後の日曜23時から生配信される同番組では、リスナーを「リスナー諜報員」と見立て、ラジオメールを「調査報告」として、本編に見つけた伏線や、次週に向けた分析などを募集することで、熱量の高い「視聴者参加型の考察番組」を作り上げている。その結果、『悪役会議室』に参加するにはドラマ本編のリアルタイム視聴が不可欠であるという前提が視聴者の間で自然と定着していったのだ。

さらに、第18話放送後の第8回はYouTubeの最大同時接続数が22万人に達し、本編が放送休止となった第9回も16万人以上がリアルタイム視聴するなど、アジア大会による放送休止期間中も視聴者の熱量維持に貢献している。本編をより一層楽しみたい視聴者にとって、『悪役会議室』はもはや必要不可欠と言えるコンテンツになっている。
INDEX
まさかの3役になり分ける堺雅人の演技コントロール

第6回の『悪役会議室』でも大きな盛り上がりを見せていたのが、第16話でシンシーに潜入捜査中の野崎(阿部寛)の前に、死亡したと思われていたリュウ・ミンシュエン(堺雅人)が現れ、野崎を執拗に追い詰めた場面である。死亡したと思われた人物が実は生きていたという展開が「お約束」になりつるある本作において、多くの視聴者が驚いたのは、リュウを演じているのが堺雅人だったことだろう。
本作で堺が演じるのは主人公・乃木、別人格の「F」に続き、なんと3役目である。堺はまるで無色透明な器のようだ。これまでも演じる役柄によって全く異なる色合いを見せてきた。主人公の乃木は、映画『ゴールデンスランバー』の青柳雅春や映画『鍵泥棒のメソッド』の桜井武史のような大きな事件に巻き込まれる気弱な凡人の面影を漂わせる。一方、乃木の別人格である「F」は『半沢直樹』シリーズ(TBS系)の半沢直樹や『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)の古美門研介の強気で攻撃的な姿を彷彿とさせる。リュウにおいては、映画『その夜の侍』の中村健一役で見せたような底知れぬ狂気が宿っている。

特筆すべきは、過去の出演作を想起させる要素がありながら、どの役柄も毎回新鮮に映る点だ。似たようなキャラクターを演じる際、どうしても発声や台詞回しに自身の癖が出てしまうものだが、堺はそれを見事にコントロールしているように思える。ベースとなる器は同じでありながら、別々の人物を演じ切ることができる。こうした堺のスタイルも、見る人の心を強く惹きつけているのだろう。
INDEX
割り切れない世界に身を置く野崎(阿部寛)とリュウ

そして、第2シーズン後半の鍵を握る人物こそ、堺が演じるリュウではないだろうか。
第16話の序盤で描かれたのは、野崎による北朝鮮への諜報活動である。野崎の下で動いていたエージェントは、リュウ・ミンシュエンとチョウ・ケイシ(高橋光臣)の2人だった。リュウは無謀な潜入捜査の末に北朝鮮側に拘束されてしまうのだが、彼の救出作戦時に野崎が得た目撃証言には違和感がある。
リュウが拘束された倉庫の向かいに住む老婆による「顔に3本の傷がある男を見た」という偵察隊からの報告はおかしい。なぜなら、リュウが顔に傷を負ったのは拘束されてからのことだからだ。しかも彼は毎日20時間の過酷な拷問を受けており、監禁されている牢獄には窓すらない。となれば、この目撃証言自体がフェイクである可能性が浮上する。あるいは、この時点で既に解放されていたリュウの姿を目撃したという情報かもしれない。もしそうだとすれば、野崎はこの段階ですでに「リュウがまだ生きている」ことに気付いていたのではないだろうか。さらに踏み込むならば、5年ぶりの再会と思われた野崎とリュウが、その裏で既にコンタクトを取っていたとしても不思議ではない。

第17話において、リュウがテントの情報を聞き出す役に自ら名乗り出たことや、あるいは第18話で明かされた極限まで野崎を飢えさせるリュウの尋問方法にも何か別の意図が隠されているのかもしれない。誰が敵で誰が味方か。何が正義か、何が悪か。第15話の野崎の言葉を借りれば、「πのような永久に割り切れない世界」において、リュウも割り切れない世界に身を置いているのだ。
INDEX
野崎とドラムの強い絆と家族や仲間への「愛」

第17話では、そんなリュウが野崎に対して抱える独りよがりで歪な愛と対比するかのように、野崎とドラム(富栄ドラム)の強い絆が描かれた。命懸けで中国の裏組織「シンシー」への潜入捜査の任にあたっていた野崎だったが、野崎を追って捜査を進めるも拘束され、銃口を突き付けられたドラムを目の当たりにし、ついに真実を明かしてしまう。愛国主義者に徹して生きる野崎が、自らの極秘任務を明かしてまでもドラムを見捨てない姿には、人が人を思う本来の温かさが宿っている。
さらに17話では、野崎とドラムの「絆」に呼応するように、家族や仲間への「愛」が映し出されていく。例えば、司令部による、拉致された別班員5名の毒殺(処刑)命令という非情な決断に葛藤していた乃木が、「F」との対話や別班員の先輩・長野(小日向文世)からの叱咤激励により、命懸けで後輩・黒須(松坂桃李)を救い出すことを決めたように。もしくは、乃木に喝を入れた長野が過去に任務を共にした熊谷(西山潤)を助けたいと願ったように。あるいは、「テント」のナンバー2で乃木の弟・ノコル(二宮和也)が、「テントは全勢力をかけて、兄さんに協力する」と乃木を慕い、その背中を力強く押したように。
INDEX
孤独を抱えた者たちが国境や組織を越えて集結

本作は壮大な冒険活劇を軸としながらも、登場人物たちの「孤独」にも着目したドラマになっている。幼い頃に孤児として育った乃木やノコルの姿がそれを物語る。または、たった1人で潜入捜査の任にあたっていた野崎も然りだ。もしくは、絶望的な拘束下にあっても野崎の助けを信じ、待ち続けていたリュウにもその影が色濃く差している。
だが、「孤独」は「孤独」のまま終わらない。孤独を抱えた者同士が出会い、仲間となり家族となる。第18話で医師・柚木薫(二階堂ふみ)が語った「昔はひとりぼっちだったかもしれないけど、今の乃木さんはもう1人じゃないんですよ」という言葉が乃木を奮い立たせたように、人は誰かを思うことで強くなる。
第18話では、そうした仲間を思う者たちが国境を越え、組織を越え、集結した。
乃木やノコルを筆頭に、テントの軍事組織「Y2K」も参加した実行部隊に、第14話で命を落としたと思われていたテントのモニター・新庄(竜星涼)と、さらに、その新庄を愛するタイ人実業家・チョッキー(タナパック・ジョンジャイパー)が仲間として加わる。また、現地の別班員や天才ハッカー・太田(花岡すみれ)と警視庁サイバー犯罪対策課の東条(濱田岳)も後方支援することに。
そうしてできた最強チームが掲げる目標は「全員生還」。だが、誰かを強く思うことは時に弱さにも繋がるのかもしれない。深い絆ゆえの悲劇が起きないとも限らない。それでも彼らが進む先に光がありますようにと願わずにはいられない。
日曜劇場『VIVANT』

TBS系にて毎週日曜よる9時から放送中
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/