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阿佐ヶ谷姉妹による語りという発明。朝ドラ『ばけばけ』
—今、放送中のドラマということで、NHK総合で放送中の、朝の連続テレビ小説『ばけばけ』と大河ドラマ『豊臣兄弟!』についても伺わせてください。過去の朝ドラ・大河と比べていかがでしょうか。
藤原:『ばけばけ』は、最初の頃は、夫が研究者に近い仕事をしている夫婦もので、長屋など町の人々が端々まで生き生きと描かれている感じが『らんまん』(2023年)に近いと思っていたのですが、それとも違って、独自の路線を貫いている感じがします。特に松江編(2026年2月第3週まで)の終わり方がすごくて、主人公夫婦や家族と同等の扱いで、ヘブン(トミー・バストウ)と錦織(吉沢亮)、トキ(髙石あかり)とサワ(円井わん)となみ(さとうほなみ)の友情を描いているのが、このドラマの特徴だと思います。
北村:ふじきみつ彦さんによる脚本の素晴らしさはもちろんですが、私は、とにかく画面の構図の素晴らしさにも感心させられていて、情緒的な見せ方にもグッと来ています。先ほど、藤原さんが挙げた松江編の終わりのシーンもそうですし、年末の第65回のトキとヘブンが手をつなぐシーンも、言葉無しで心情を見せていきますよね。これまでの作品と比べても、朝ドラの15分という放送時間の使い方も贅沢だと思いますし、新しさがあると思って見ています。
明日菜子:私、改めて、おトキちゃんがすごい好きだなと思って……。なんでなのか考えていたら、髙石さんが好きなのもありますが、おトキちゃんって、今のドラマには珍しいドジっ子ヒロインの系譜だと思うんですね。
「てへへ」みたいな顔で許せちゃう感じのおおらかなヒロイン。おサワちゃんとのシーンもそうでしたけど、周りの人の気持ちを察するのがあまり得意ではないからこそ、攻撃を受けやすい。でも、やっかみも受け入れるような懐の深さがあるんですよね。最近の朝ドラのヒロインって、攻撃されたら、それに立ち向かう人が多かったと思うんですけど、おトキちゃんの場合は、受け入れる。彼女がそのようになったのには、幼少期にド貧乏だった背景があって、自分の心を鈍くしないと生きていけなかったという設定はすごく面白いなあと思っています。そこの建付けが、特に後半パートには効いてきているなと思いました。
あと、従来の朝ドラと違うところでいうと、阿佐ヶ谷姉妹さんの語りが発明的ですね。最近の朝ドラは、視聴者のヘイトコントロールみたいなものがすごく大事だと思うんですが、阿佐ヶ谷姉妹のお二人の語りは、視聴者がツッコみたくなるところに「まあまあ」みたいな感じで入るから、溜飲が下がるんですよね。姉の江里子さんが基本的に語りをされてますが、とてもナレーションが上手い。脚本のふじきさんと縁もあるということも含めて、奇跡の三段重ねだなと思いました。