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映画『キラー・オブ・シープ』解説 『ムーンライト』に影響を与えた伝説の傑作

2026.3.9

#MOVIE

『キラー・オブ・シープ』が『ムーンライト』に与えた影響とは

バーネットおよびこの作品は、現代の映画や新しい世代のアフリカ系監督にも影響を与え続けている。特に、『ムーンライト』で「第89回アカデミー賞」作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督は、『キラー・オブ・シープ』の屋根を飛び越えるショットについて、次のように言う。

大人はコントロールできない世界の重さに押しつぶされているが、子供は空中を浮遊している。これは映画史の中で最高のカットの1つだ。」

Barry Jenkins 『Interview Magazine』

チャールズ・バーネット監督

バーネットからの影響を公言するジェンキンスだが、なかでも、『ムーンライト』は、『キラー・オブ・シープ』の息吹を強く感じ取ることができる。

第1章で見られるシャロンと少年たちが遊ぶシーンは、『キラー・オブ・シープ』で映し出された子供たちを思い出さずにはいられない。また、大人になったシャロンがケヴィンと再会しダイナーで踊る姿は、ウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』(1997年)からの影響だとされているが、前述のスタンと妻のゆったりとしたダンスとも結びつく。『キラー・オブ・シープ』と違い、家庭は崩壊しているが、母の代わりにシャロンの支えとなるのは、たまたま出会った売人、フアンだ。

ジェンキンスも述べた子供の自由さ、軽やかさと大人の重々しさ。『ムーンライト』では、1人の人間の中で、アイデンティティに悩むシャロンの成長を通して表現されているように思える。

また、『ムーンライト』の劇伴を担当したニコラス・ブリテルが「チョップド・アンド・スクリュード」を用いたのも話題になった。速度を落としてピッチを下げるヒップホップの技法によって、子供時代の軽やかなピアノの旋律が、成長と共に重く引き延ばされた低音へと変容していく。これはバーネットが画面に描いた重圧や停滞感を聴覚的に表現したものと考えることもできるだろう。

『キラー・オブ・シープ』が描いたのは、1970年代のワッツ地区という固有の場所だった。しかし、忘れられないショットの数々、そこから見て取れる社会のリアルな重圧や、大人と子供といったテーマは、視覚的にだけでなく聴覚的にも形を変え、現代の映画の中に脈々と息づいているのだ。

『キラー・オブ・シープ』

監督・脚本・製作・編集・撮影:チャールズ・バーネット
音響:チャールズ・ブレイシー
出演:ヘンリー・G・サンダース、ケイシー・ムーア、チャールズ・ブレイシー
原題:Killer of Sheep/1977 年/アメリカ/英語/80 分/モノクロ/スタンダード

配給:After School Cinema Club
公式サイト:https://www.afterschoolcinemaclub.com/everydayblues

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