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映画『キラー・オブ・シープ』解説 『ムーンライト』に影響を与えた伝説の傑作

2026.3.9

#MOVIE

座り込む男性と立ち支える女性

本作では、大人と子供だけでなく、男性と女性も対照的に描かれている。座り込んだり、寝そべっている男性たちに対し、女性たちが高い位置にいるショットが反復される。たとえば、エンジンの横で無気力に寝ている男性に対して、女性は「よくもこんなバカと妹は結婚したわ」と嘆いたあと、立ち上がって足蹴にする。

スタンの妻 / ©1977 Charles Burnett ©2025 Milestone Film & Video for KILLER OF SHEEP

印象深いのは玄関前のシーンだ。「ヤバい仕事」に勧誘しようとする男性2人組がスタンの家にやってくる。座り込むスタンの後ろに毅然と立つ妻。彼女は周囲を見渡し、男たちを追い払う。別の場面ではスタンと友人が家の入り口前の階段で座り込んでいるが、その後ろに女性がやってきて腰に両手を当てて立ち、彼らを見下ろしている。

これはコミュニティ内で女性が優位にあることを単純に示す描写ではないだろう。玄関の入り口にたつ彼女たちは、暴力などによって決定的に崩壊しないよう、家を守り支える柱かのようだ。

©1977 Charles Burnett ©2025 Milestone Film & Video for KILLER OF SHEEP

この点を踏まえると、ダイナ・ワシントンの“This Bitter Earth”が流れるなか踊るシーンでは、精神的にも肉体的にも疲れ果てた主人公を妻が支えているようにさえ見える。ワッツ地区の重々しさと、座り込んで横になる男性たちの中で、女性たちは立ち続けねばならない。踊っている途中でスタンがフレーム外に消えたあと、1人になった妻が寄りかかれるのは家だけだ。彼女たちは社会の重力を背負わされ、それになんとか抗うかのように立っている。

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