2026年1月13日(火)から展開されている、江崎グリコ「ポッキー」の新しいキャンペーン、その名も「メッセージと一緒にシェアしよう #ラブなポッキー」。これは、カセットテープのデザインがあしらわれた12種類のポッキーのパッケージに、それぞれJ-WAVEのディレクター陣が選曲した特別なSpotifyプレイリストが付属するというもの。
ストリーミングサービスやYouTubeを通して、いくらでも音楽を聴くことができ、SNS上にはアルゴリズムにより提案されるプレイリストが溢れている今。いくらでも手軽な手段があるのに、なぜ私たちは人間の選曲に沿って音楽を聴くと、胸が弾むんだろう。
その謎を探るべく、J-WAVEの番組『ACROSS THE SKY』や『GRAND MARQUEE』などを担当しているディレクターの滝澤康平、『TALK TO NEIGHBORS』や『BITS & BOBS TOKYO』などを手がけるフリーランスのディレクターのkiko matsuuraに話を聞いた。
また、後半では選曲の技術論から、メディアとしての「音」の責任へ。J-WAVEコンテンツクリエーション部部長・朝倉芳明に、ラジオと音楽を巡る関係についても話してもらった。ラジオの特性、メディアとしての矜持、音楽ビジネスとの変遷。話題はどんどんディープに、本質へと進んでいった。
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10代の「リアル」に届ける。J-WAVE流、プレイリストの編み方
ー今回、滝澤さんは「元気がほしいときの♡な」、matsuuraさんは「わかってほしいときの♡な」というテーマで洋楽、邦楽を各30曲ずつ選ばれています。どのようなコンセプトで選曲されたんですか?
滝澤:普段のラジオ番組だと、幅広い世代に向けて選曲している感覚があるんですが、この企画はピンポイントに10代後半がターゲットになっているのでチャレンジングだし、面白かったです。

滝澤:まず、やっぱり「恋」と「元気」が軸になるだろうなと思って、イメージに合いそうな曲をどんどんプレイリストに入れていきました。

matsuura:私は「わかってほしい」にフォーカスして、特に邦楽は歌詞をきちんと読みたくなるような曲を選びました。10代が聴いている楽曲をいろいろと調べたんですけど、それが本当に10代に刺さっているのか実感がなくて。TikTokなんかでバズっている曲は私たちにとっては「昔のヒット曲じゃん」という感じのものも多いんですよね。

ー「広告のイメージで作り上げられた10代」なんじゃないか、という。
matsuura:そうそう(笑)。「本当にリアルな10代なのかな?」と。友人のお嬢さんが音楽に詳しい高校生だったので、直接聞いてみたんですけど、意外とリサーチした情報と合致していて、確信を持って選ぶことができました。
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「J-WAVEらしさ」の先にある、オルタナティブとポップの境界線
ー今回のコラボレーションは「J-WAVEのディレクターが選曲した」という部分が核になっていますが、「J-WAVEらしさ」はどのくらい意識しましたか?
滝澤:J-WAVEは一般的に「おしゃれ」と言われがちだと思うんですけど、ディレクターによって考え方はさまざまだと思うんです。僕としては、オルタナティブだったりアンダーグラウンドだったり、枠に収まらないものと、ポップで広がっていくもののちょうどいいバランスを取っていく感覚ですかね。

滝澤:最近の若いバンドでは羊文学が一番マッチしていて、J-WAVEでもよく選曲されているイメージです。
matsuura:担当している番組によっても求められるものが違います。私個人でいうと、お昼に長時間放送するいわゆるワイド番組よりも、割とコンセプトがはっきりした箱番組(※)を担当することが多くて、J-WAVEでどんな曲が多くかかっているかということに、自分の選曲が左右されることはあまりないです。
※毎週決まった曜日、特定の時間帯に1回だけ放送されるレギュラー番組

matsuura:ただ今回のプレイリストに関しては、J-WAVEリスナーに耳馴染みのある曲だけでなく、昔からJ-WAVEを聴いている人にとってちょっと懐かしいような曲を意識しました。

ー懐かしい曲というと?
matsuura:邦楽ならm-floの“come again”でしょうか。個人的にも色褪せない名曲だと思うんですが、高校生の子に聞いたら親御さんが聴いていたから知っていると。リリース当時はJ-WAVEでずっと流れていたので、こういったヒット曲は2世代に渡って聴かれているんですよね。岡村靖幸さんの“カルアミルク”なんかもそうで、今回はDaokoさんによるカバーを選曲してます。
matsuura:ストリーミングの影響だと思うんですが、若い世代は新旧を気にしないんですよね。私たちは仕事柄、なるべく新譜をチェックしよう、流そうとしちゃうんですけど、聴く方はあまり関係ないんだなという。
滝澤:matsuuraさんがおっしゃる通り、ストリーミングの時代になってから若い世代には「新しい / 古い」という感覚が本当にないんですよね。a-haの“Take on Me”にも「めっちゃいい! 最近の曲?」というようなリアクションが返ってきます。すごくシームレスなんですよね。
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音楽の「背景」を知ることで変わる解像度
ープレイリストの中で、特に聴いてほしい流れはどこでしょう?
matsuura:洋楽の方は、プレイリストをスマホでパッとみた時に若い子がよく知っているアーティストが来るようにしたんです。目にした印象を意識したというか。そこからは新しいものも古いものも横断して聴けるようにしました。
滝澤:僕の邦楽のプレイリストは「恋愛一直線」というような元気な流れにしました。その中に入れたいなと思ったのがKan Sanoさんの“Natsume”で、この曲は夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したというエピソードがモチーフになっているんです。これ自体は諸説あるんですが、この背景を知っているかどうかでこの曲の聴こえ方が全然違ってくるんですよね。
滝澤:こういった文化や教養を知れば知るほど解像度が上がっていく音楽の楽しみ方を10代後半のリスナーにも知ってほしいという気持ちを込めて選曲しました。
ー実際の選曲作業はどのように進めたんでしょうか?
滝澤:まず候補曲をいっぱい選んで、自分の中で肝になるような曲を中心に、線が繋がるようにストーリーを意識しました。特に邦楽は歌詞が聞こえやすいので、アーティストのバックボーンも感じ取れるような仕組みを考えたり。やっぱり感覚的な作業なので、言語化はなかなか難しいですが。

matsuura:私も候補曲をガーっと出して、一度全部並べて聴いてみるんです。滝澤さんと同じように、邦楽は歌詞によって物語を作れるのでそこを意識しましたね。あと、音楽的なつながりもやっぱり大事で。クラブDJのようにミックスはしないですけど、同じ音像で繋いでみたり、逆に全然違う音像の曲を続けることで世界観をガラッと変えてみたりします。