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『攻殻機動隊』リスペクトの現代アートが凄い!

他にも、コラボレーションアートはギャラリーBのあちこちに点在している。例えば「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」のエリアには、『笑い男になる鏡“Laughing Man Mirror”』という面白い作品がある。作中に登場したサイバーテロ事件・通称「笑い男事件」のように、カメラに映った鑑賞者たちの顔がリアルタイムでマスキングされるというものだ。これで、私もあなたも笑い男。作品世界が現実をハッキングしてきたかのような感覚に、不謹慎かもしれないがワクワクしてしまう。

個人的に本展で最も興奮したのが、「AI監視社会のカモフラージュ」というアパレル作品である。この衝撃的なTシャツは……なんと身につけることで、監視カメラの画像認識AIから「人間として認識されづらくなる」機能を持っている。デザインプリントに、機械学習への対抗手段であるAdversarial Patchという手法を使っているのだという。

会場では実際に監視カメラ&モニターの前でTシャツを身体に当てて、その効果を確認することができる。筆者は人間みが強い(?)のか人間として認識されてしまって悔しかったが、撮影に協力してくれたスタッフさんは画像認識AIから見事に姿をくらましていた。『攻殻機動隊』の十八番である光学迷彩をイメージした画像エフェクトも相まって、感動に震えた瞬間だった。
最後にもう一点、『EGO in the Shell』にも触れておきたい。本作では作家自身のリアルな思い出の画像(写真)と、生成AIによって造られた「サイボーグ女性として生きる一生」の思い出画像とが重ね合わさり、結婚式のプロフィールムービーのような、あるいは走馬灯のような映像を形づくっている。

眺めているうちに、どこからが造られた記憶でどこまでが本当の記憶なのか、不気味なほど境界は曖昧になっていく。もしかしたら、こうだったかもしれない、そう言われてみればそんなような気もする。人間の記憶は上書きを繰り返して都合よく保存されていくものだからこそ、ぞっとする。例えば自分の写真で同様の映像が製作されたとしたら、自分は生身の人間であると自信をもって断言できるだろうか? そう考えると、全く自信が持てない。これは『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の主人公の不安に通ずるテーマと言えるのではないだろうか。