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新しい劇団との出会いはあった?気になる団体・南極の動き
丘田:この機会に是非お聞きしたかったのですが、お2人はまだ新しい劇団と出会うことってありますか? 私は結構、2025年初めて観た劇団が多かったんですよ。俳優の長井健一さんが主宰する宝宝も第1回公演は配信で拝見していたので、劇場での観劇は、第2回公演『みどりの栞、挟んでおく』が初めてでした。
いいへんじの中島梓織さんの作 / 演出で本屋を営むシングルマザーの翠とそこで働くゲイセクシャルの宝良の友人関係を中心に、他者とともに生きる上で生じる分かり合えなさ / 分かり合いたさを掬い上げた作品で、育児と演劇の両立をはじめとする創作の裏側を観客にひらいていくトークやインタビュー企画などの作品の外側の試みも含めて印象的でした。
川添:私は、初めて南極の『ゆうがい地球ワンダーツアー』を彩の国さいたま芸術劇場の小ホールで観ましたが、すごく面白かったです。この間の『SYZYGY』は観られなかったんですが、次の公演があったら絶対観ようと思っています。南極は、毎回ああいう感じの作品なんですか?


丘田:2024年ぐらいまでは長らく「恐竜」がテーマの作劇をされていたんですよね。私が初めて観た南極の作品は、2024年3月上演の『(あたらしい)ジュラシックパーク』で、恐竜のテーマパーク内で働いている、外界を知らない女の子が主人公の話でした。
丘田:その後は、恐竜たちの通う高校を舞台に、青春の終わりと恐竜の絶滅を掛け合わせた『バード・バーダー・バーデスト』を上演して、それも開幕後のクチコミ含め、結構話題になっていました。そこで「恐竜」がテーマの何部作かが一区切りついて、2025年の3月にメタ演劇の要素を含んだ『wowの熱』をやったんですよ。その後が『ゆうがい地球ワンダーツアー』ですね。
丘田:『ゆうがい地球ワンダーツアー』は明確に「子どもも観られるビジュアル演劇」というテーマで作られていました。実際に私も小学生の子どもたちを連れて観に行ったんですが、大興奮していたので、親子で観られてよかったです。
山﨑:『ゆうがい地球ワンダーツアー』はビジュアルにすごくウェイトが置かれていたのもあってか、戯曲としては前の作品のほうが面白かったなと個人的には思いましたね。
丘田:たしかに、子どもの目でも楽しめるように仕掛けを凝らした部分はあった気がします。ただ、物語のテーマとしては「死」を扱っていたんですよ。子どもって、漠然と「死んだらどうなるの?」と興味を持つ時間があったりすると思うのですが、この作品は南極の劇作家、こんにち博士さんの幼少期のそういった体験から着想を得たそうです。だから、ただのファンタジーでもなく、『wowの熱』ともまた違ったアプローチの作品でしたね。
山﨑:『wowの熱』はややシリアス寄りというか、南極のこれまでの作品の中でもちょっと外れていて、違うことに取り組んだのかな、という感じはありました。
ー南極がここまで人気が出ている理由はなんだと思いますか?
丘田:細部までセルフプロデュースが行き届いているとは思いますね。舞台作品だけでなく、グッズやチラシとか、キービジュアルや宣伝動画にもめちゃくちゃ力を入れているんです。あとはお笑い芸人の方とコラボしたり、ニッポン放送とタッグを組んでラジオドラマをテーマとした作品を作ったり、多ジャンルからのお客さんを巻き込むのも上手で。そうした積み重ねによって注目が集まった印象はありますね。
―ダウ90000とも重なる部分がありますね。
山﨑:演劇ファンだけではなく、もっと外側にいる層にもウケている感じはあります。たとえば段ボールで舞台美術を作るというコンセプトがしばらく続いていたりもしたんですけど、そういうちょっとレトロっぽい感じも、今人気が出る要素ではあるなと思いました。
丘田:そうですね。おしゃれで、洗練されたビジュアルを打ち出しているんですけど、その実全員で事務所に集まり、全員で手を動かし、全員で何個も小道具作って、本当に地道にものづくりを突き詰めている。効率的な時代に非効率を選ぶという、ある意味での逆行もまた南極の個性であり、強みなのかもしれません。
―やまけんさんは、2025年初めて出会った劇団はありますか?
山﨑:2025年の1月に餓鬼の断食の川村智基さんが助成を受けているクマ財団の展示でやったパフォーマンスを観たんです。そこから年末の12月に本公演を観て、ということで餓鬼の断食が圧倒的に印象に残っているのですが、長くなるのでまた後半で……(笑)。
ただ、個人的には若い世代のアーティストの「発掘」みたいなことは若い、アーティストと同じ世代の批評家やライターにやってほしいという気持ちが年々強まっているんですよね。私と上の世代との関係を振り返ってみても、世代ごとの価値観や感性の違いみたいなものは確実にあるので、私みたいな上の世代が言っていることは放っておいて、「これが面白いんだ!」ということを自分たちでがんがん発信していってほしいです。