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西美『オルセー美術館所蔵 印象派―室内をめぐる物語』で堪能する、印象派の意外な魅力

2025.10.31

#ART

印象派の画家が描く「女性と日常」

第2章展示風景

第2章は「日常の情景」。室内でくつろいだり手作業したりする、主に女性の姿を描いた作品たちだ。

左:エドゥアール・マネ『ピアノを弾くマネ夫人』(1868年) / 右:エドガー・ドガ『マネとマネ夫人像』(1868-1869年) / 北九州市立美術館

写真の2点は、いずれもマネ家で開かれた音楽サロンの様子を描いたもの。マネとドガはともに上流階級出身で齢も近く、音楽鑑賞が共通の趣味だったらしい。奥はマネ自身による作品で、ピアニストだった妻シュザンヌの凛とした姿を真横から捉えている。一方、手前の作品はドガが描いて夫妻に贈った作品。演奏を聴くマネと、ピアノを弾くマネ夫人を同様に真横から描いている……はずだったのだが、その画面の右側は大きく欠損している。なんと妻の顔の描かれ方に憤慨したというマネが、キャンバスを切断したのだという。残った部分を観るに、マネのリラックスしきった(赤ら顔でちょっとだらしない)描かれ方も大概なのだが、それよりも許せなかった「夫人の顔」部分とは一体どのようなものだったのか、つい意地悪な想像を膨らませてしまいそうになる。

ピエール=オーギュスト・ルノワール『ピアノを弾く少女たち』(1892年)

第2章で見逃せないのは、ルノワールの傑作『ピアノを弾く少女たち』だ。まるでキャンバスから音楽が溢れ出ているかのような甘さ、優しさ、朗らかさは、前に立つ人を笑顔にせずにはいられない。室内画っていいな……室内っていいな……と素朴に思わせてくれる作品である。会場では19世紀の邸宅を思わせるシルバーの壁紙を背景に、当世風のロマンティックな装飾の譜面台と併せて展示されており、作品の醸し出すメロウな雰囲気にたっぷりと浸ることができる。

同・部分

ふたりの親密な少女、柔らかい布と柔らかい髪、桃色、緑色、金色……キャンバス上の全てが、音楽記号のスラーで繋がれたようにぼんやり溶け合っているのを感じないだろうか。ピアノの黒鍵も、もはや羊羹のようにひとかたまりになっている。

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