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ヘルシンキ橋本薫がソロで掴んだ自分のリズム。迷いも遠回りも抱えて鳴らす音楽

2025.11.22

橋本薫『日記』

#PR #MUSIC

「洋楽っぽいバンド」に収まりきらない自分の核を、ソロで分けていく

SUM 41に影響を受け、Vampire Weekendにインスパイアされた楽曲もリリースしたヘルシンキは、「洋楽に強い影響を受けたバンド」というパブリックイメージがあるように思います。バンドとしてのスタイルが確立された実感を得たのはいつですか?

橋本:最初のフルアルバム『ME to ME』を出した2016年頃には、すでにバンドに対する印象がある程度できていたんじゃないかな。2ndアルバムの『Eleven plus two / Twelve plus one』でそのイメージがさらに強くなって、洋楽っぽいバンドとして受け取られた実感がありました。

橋本:自分が好きなものが伝わった証だと思うんですが、ただ冷静に状況を見ていくと洋楽みたいな音楽が好きな人って思っていたよりずっと少なかったんです。「戦うフィールドってこんなに狭いんだ」と感じたこともありました(笑)。日本のロックの文脈に強い人たちを横目で見て、あっという間に広く届いていくのを見ながら、複雑な気持ちにもなりましたね。

―バンドのパブリックイメージが確立されていく一方、資料にあるように橋本さんの音楽的嗜好は、マック・デマルコ(Mac DeMarco)やYouth Lagoon、柴田聡子さんなど、常に変わっていきましたよね。パブリックイメージと橋本さんが聴いていた音楽とのズレが、ソロを始めるきっかけでもあるんですか?

橋本:まさに。2025年の頭はずっと自分自身を整理する日々だったんですよ。これまではヘルシンキであらゆることをやろうとしていた。それはそれで面白いし、ヘルシンキらしさでもあったと思うんですけど、自分の核になっているもの全てを一つの場所でやろうとすると、外から見た時に分かりづらくなるなと気づいたんです。

自分の核をいくつかに分けて、それぞれの場所で表現していく方が、作品としての強度も上がるし、聴く人にもより伝わりやすくなるんじゃないかと感じたんです。

なるほど。自分のやりたいこととして取り組んだソロ作品に、プロデューサーとしてnever young beachの巽啓伍さんが参加しています。自分のやりたいことを理解してくれる理解者として彼を迎えたのでしょうか?

橋本:そうなんです。巽くんとは普段から毎週のように会っていて、一番よく遊ぶ仲間なんです。だから一緒に仕事をしたいという気持ちもあったし、何よりお互いの理解が深くて、コミュニケーションが密に取れるのも大きかったですね。

今回の作品『日記』は、それぞれの曲を聴いたときに、日々のことを具体的に思い出せるようなものにしたかった。自分たちももう30代後半に差しかかっていて、こんなふうに遊びながら過ごせる時間は、きっとそう長くは続かないかもしれない。だからこそ、日々をひとつの形としてパッケージできればいいなと思いました。

影響を受けた作品として挙げているマック・デマルコやYouth Lagoonのどんなところに背中を押されたんでしょうか?

橋本:Youth Lagoonが2023年に発表したアルバム『Heaven Is a Junkyard』は、アメリカ人アーティストのトレバー・パワーズ(Trevor Powers)が、2度と歌えるかわからないという病気を乗り越えての復帰作。絶望的な状況を経た人間の、それでも音楽を作ろうとする意志がものすごく強く出ていて、歌や演奏の一つひとつに宿っている魂や美しさにすごく感動したんです。深い闇から這い上がったら、あんなに美しい音楽が生まれるんだと思いました。

橋本:マック・デマルコが2022年に発表した『Five Easy Hot Dogs』もそう。自分のルーツと関わりのある場所を車と機材で巡りながら、その土地で録ったインストのアルバムなんですけど、土地の空気や匂いみたいなものまで感じられるような本当に素晴らしい作品。「ひとりの人間が作る音楽」ってこういうことなんだなと思わされました。僕も各地を転々とした人生を過ごしたものとして、すごく惹かれました。

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