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原作者・村井理子×中野量太監督に聞く『兄を持ち運べるサイズに』映画化の舞台裏

2025.11.27

#MOVIE

「映画を観て、少し気持ちが軽くなりました」(村井)

ータイトルについて、『兄の終い』から『兄を持ち運べるサイズに』としたことについても教えてください。

中野:『兄の終い』というのも良いタイトルなんですけど、映画としては少し硬いイメージがあって、映画化するときは別のものにしようとは最初から思っていました。でも、作家さんにとってタイトルは本の顔だから、変えるのは難しいかもしれないなと思っていたんです。「兄を持ち運べるサイズにしてしまおう」というのは、本の帯にあった言葉なんですよね。これは村井さんの言葉で僕には思いつかないものだし、これをタイトルにするんだったら村井さんも納得してくれるかなと思って提案したら、快諾してくださって。

村井:私は、ほかのタイトルを監督から提案されても、NOとは言わなかったと思いますよ。そこまでこだわりがないほうなんです。それに「兄を持ち運べるサイズにしてしまおう」っていうのは、当時の私の心の叫びだったんです。警察から「引き取りに来てください」と言われたものの、「あんなデカい人をどうやって?」って。一人だったし、分からないことだらけで、この先どうするの? という状態のときに思わず出てきたギリギリの言葉だったんで、そこの部分を拾ってくれたんだったら、もう「どうぞどうぞ」という感じでした。

中野:それと、最後の新幹線のシーンを描くためには、「持ち運べるサイズ」になっていないといけなかったんですよね。

ーあのシーンは監督のオリジナルということですが、観られて村井さんはいかがでしたか?

村井:骨壺って重くて、荷物もいっぱいだったので、実際にはお骨は郵送してもらったんです。でも、本当はやっぱり抱えて持って帰ってあげたかったんですよ。できなかったことが映画の中で叶ったので、それもよかったなと思いました。

©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会

ー監督は、村井さんがお兄さんのことが結局は好きなんだなと思ったとのことですが、村井さんは、亡くなったとき、エッセイを書いていたとき、映画を観たときと、お兄さんに対しての思いに変化はありましたか?

村井:書いた時点で私の気は済んではいたんですけど、映画になったことで、また新しい局面が見えたのが新鮮で良かったですね。映画を観るまでは、兄の死は悲劇だと思ってたんですよ。かわいそうだなと思っていて。でも、そこに喜劇が加わったことで、「なんか兄ちゃん楽しそうでいいじゃん」と思えて、少し気持ちが軽くなりました。あと、監督が映画の中で、父母と兄とをもう一度会わせてくれた気がして、すごく楽になったんですよね。「なんだ、あっちで一緒にいるんだったら大丈夫じゃん」って。そう信じて生きていけばいいんだと思えました。

『兄を持ち運べるサイズに』

11月28日(金)公開
原作:『兄の終い』村井理子(CEメディアハウス刊)
脚本・監督:中野量太
出演:柴咲コウ、オダギリジョー、満島ひかりほか
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
©2025 「兄を持ち運べるサイズに」製作委員会
https://www.culture-pub.jp/ani-movie/

『兄の終い』

著:村井理子
価格:単行本1,540円(税込) 文庫792円(税込)
CEメディアハウス

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