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『Analog Market』レポート オーディオテクニカが提案する「感性を刺激する蚤の市」とは 

2025.11.25

『Analog Market produced by Audio-Technica』 

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お寺に響き渡る「自然に捧げる」雅楽とピアノの生演奏 

この日『Deep Listening』のトリを飾ったのは、本年度グラミー賞の最優秀映像作品スコア・サウンドトラック賞にノミネートされた映画『SHOGUN』のサウンドトラックで、ロサンゼルスの作曲家チームにアレンジャーとしても参加した作曲家・石田多朗による「Animistic Music | Gagaku Electronics」である。石田と雅楽奏者(篳篥、楽琵琶、笙、龍笛)に加えて音響エンジニアが共演し、1300年以上受け継がれてきた日本最古の宮廷音楽「雅楽」に現代から迫る内容だ。築地本願寺本堂奥の薄明かりの中、ピアノと雅楽器が織りなす時空を超えた音の対話が静かに響き渡った。 

©オーディオテクニカ/SOICHI ISHIDA

「今日の演奏では、僕のピアノ以外はすべて古典雅楽の旋律をそのまま使用。テンポだけ少し落とし、呼吸を合わせているんです」と石田が解説。今から10数年前、美術館より「雅楽をテーマにした音楽」を依頼されたことがきっかけで雅楽と出会い、完成した曲を坂本龍一に「いいじゃん」と評価され、この世界に踏み込む決心をしたという。以降、雅楽奏者との共演を重ねてその根源に触れるうちに、石田の中で音楽観そのものが大きく変わっていく。 

「それまで僕は、音楽を“人に聴かせるもの”と捉えていました。ファンクやジャズなどすべて、人と人とのコミュニケーションの手段です。でも雅楽は違う。演奏者はみな、人にではなく“自然に向かって”音を奏でている。神や太陽、大地や風に捧げる音楽なんです」この気づきは石田いわく、「まるで並行宇宙を見つけたような衝撃」であり、聴くという行為の根底が覆る体験だったと振り返った。 

さらに石田は雅楽器の美しさにも言及し、「楽器というより1本1本が工芸品で、美術作品を演奏しているような気持ちになる」とその魅力を語った。その後、宮内庁楽部による雅楽『太平楽』のレコード音源をOMAのサウンドシステムでじっくり鑑賞し、最後は雅楽古典曲“常世“を全員で合奏。ピアノと雅楽器の音が溶け合い、1300年の記憶が未来の音へと生まれ変わっていくようなひとときを味わった。 

『Analog Market 2025』は、単なる音楽イベントでも、懐古的な「アナログ回帰」の場でもなかった。そこにあったのは、テクノロジーが極限まで進化した現代においてなお、人が「手で触れ、耳で聴き、時間を味わう」ことを求め続ける根源的な欲求。築地本願寺という、1000年単位で時間を刻んできた空間に身を置きながら、針が落ちる音やテープの回転、楽器の呼吸に耳を澄ますと、音楽は単なる娯楽ではなく「生きること」そのもののようにすら感じる。アナログとは「記録の手段」ではなく、世界と自分との距離をもう一度測り直すための「静かな呼吸」なのだ。 

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