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前作リリース後、コロナ禍に突入。迷いと内省の日々の果てにたどり着いた場所
―9月に5年ぶりのアルバム『All About McGuffin』をリリースされて。今回のアルバムを、meiさんはご自身にとって「第一章の最後の作品」という気持ちで制作されたとか。
mei:先ほどの話にも繋がるんですが、このアルバムに関しては、今までと曲の作り方は大きく変わっていなくて。もちろん変化した部分もありますし、新機軸にも挑戦しましたが、基本的には、1stアルバムの『Sway』(2017年)から地続きにあると思います。実際どうなるかは分からないですが、次の作品は大きく変化するだろうという予感があったので、一旦、今作で今までの自分に区切りをつけたかった。なので、自分がやりたいことを詰め込んだアルバムにしよう、と思って作ったんです。
―本作に至るまでの5年間には、様々な葛藤があったそうですね。
mei:そうですね。2ndアルバム『Ampersands』(2020年)はコロナ禍の真っ只中にリリースしたこともあって、リスナーからどう受け止められたのか、よく分からない結果になってしまったんです。せっかくレーベルに入って、仕事も辞めて、音楽に集中して、新しいバンドメンバーと作ったのに……。そんなことがあって、やる気がなくなるでもないですが、次のアルバムをどう作ればいいのかが分からなくなってしまって。
mei:音楽をやっていると、お金に余裕があるとはとても言えないような状況になるし、コロナ禍で色々な人と疎遠になり、会うことがなくなった。私生活でも色々あって、自然と自分自身を省りみることに時間を費やすことになったんです。「なぜ自分はこういう考え方に陥るのか」という問題の根源を解決したいと思って、カウンセリングに通ったり、自分で本を読んで、勉強を続けていたんですが、去年の7月ぐらいに急にいろんなことが吹っ切れて。
今になってみて思うと、なぜこのタイミングでそこまで深く自分と向き合う必要があったのかはよく分からないんですが、「今、これを解決しないと先に進めないな」と、その時は思ったんですよね。

―何か特定の具体的な出来事が、meiさんを変えたのでしょうか?
mei:「これだ!」という解決の糸口や正解が見えたというよりは、「諦められるようになった」という言い方の方が正しい気がします。ごちゃごちゃ悩んだり、引きずったりすることがなくなったことで、音楽のことだけを考えていられるようになったんです。今は、本当に究極に自分勝手になれている感じがしますね。諦められるようにもなったし、同時に諦められない時にちゃんとそれを譲らずにいられることもできるようになりました。
―そうした心境の変化は、今作にどんな形で反映されていると思いますか? アルバムのリリースに際して寄せた文章に、「素朴はとてもロマンチックなことだと思います」と書かれていましたが、そこにはどんな思いがあったのでしょう?
それに関しては今作で思ったことではないのですが、人が未熟な状態って、時にはすごく魅力的だと思うんです。自分にも足りていない部分や成熟していない部分がある。映画でもそういう人物を主人公にしたものがありますよね。未熟で物事がままならないと悩んだり、苦しんだりすることがあると思うんですが、それは誰でも共感できることだと思うし、愛おしいものだと思うんです。