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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

『あいち2025』で蒔かれた種は、私たちの日常でいつか薔薇を咲かせる

2025.10.22

国際芸術祭『あいち2025』

#PR #ART

30秒近くの拍手と歓声が起こったオープニングセレモニー

開幕に際し、芸術祭はステートメントを公表した。会場内はもちろん、公式サイトやSNSにも掲載されているが、まずはここに全文を引用して紹介したい。

本芸術祭が何を大切にしているのか、アーティストや彼らの作品が、どのように響きあい形作られた場なのか、ということが端的に理解できるだろう。そして、各会場をめぐる際のヒントにもなるはずだ。

国際芸術祭「あいち2025」は、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(2007年)をふまえ、すべての先住民族および先住民のアイデンティティをもつ人々の歴史、文化、権利、そして尊厳を尊重します。

また、民族や国籍、人種、皮膚の色、血統や家柄、ジェンダー、セクシャリティ、障がい、疾病、年齢、宗教など、属性を理由として差別する排他的言動や、その根幹にある優生思想(生きるに値しない命があるというあらゆる考え方)を許容せず、この芸術祭が、分断を超えた未来につながる新たな視点や可能性を見出す機会となることを目指します。

国際芸術祭「あいち2025」公式サイトより

取材のために滞在した2日間、筆者は印象的な瞬間に何度も遭遇したが、そのひとつがオープニングセレモニーでのフール・アル・カシミ芸術監督の挨拶だ。開幕前日、多くの参加アーティストとキュレーターらが、愛知県芸術劇場 大ホールに一堂に会した場でのアル・カシミ監督の言葉を、一部抜粋 / 編集して紹介する。

アル・カシミ:「灰と薔薇のあいまにという本芸術祭のテーマを心に持ちつつ、非常にエモーショナルな気持ちで準備を進めてきました。私が生まれた頃から占領状態にあるパレスチナでは、長年、そしていまこの瞬間も、多くの人々が虐殺されています。それが非常に苦しいです。イラク、シリア、そのほかの多くの国でも紛争や戦争が続いています。

今は全てが崩れ果てていたとしても、いずれ「灰と薔薇のあいまにの時間が訪れます。そのとき、壊れたもの全てが再び蘇り、生まれ変わることは可能でしょう。この言葉の意味は非常に大きく、重いと感じています。

芸術と文化には、誰もが声を高く上げられる安全な場所をつくる、という重要な役割があると思います。アーティストらの自己表現という面もありますが、同時に、声を上げられない人たちのために果たしている役割もあるでしょう。我々は屋上から大きな声でメッセージを叫ぶことができます。しかし結局のところ、パレスチナが自由になるまでは、我々も自由にはなれないのです。

そう話し終えるやいなや、万来の拍手と賛同を示す歓声が30秒近く続いた。

「灰と薔薇のあいまに」とは、シリアの詩人アドニス(1930年~)が、1967年の第3次中東戦争後に発表した一節だ。その詳細やテーマに用いた経緯などは、フール・アル・カシミ芸術監督×中村茜キュレーター対談記事でお読みいただきたい。

フール・アル・カシミ芸術監督は、ディレクターを務めるシャルジャ美術財団で、アラブや世界中のアートをつなぐ仕事に尽力し続けてきた人物だ。

アブダビやドバイなど、7つの首長国で構成されるアラブ首長国連邦(UAE)のシャルジャ首長国で、2023年に開催された芸術祭『シャルジャ・ビエンナーレ』ではキュレーターを務めてもいる。そのときアル・カシミが試みた、美術とパフォーミングアーツのオーバーラップが、本芸術祭でさらに深化したことが、会期中に予定されている9つのパフォーミングアーツのプログラムからも伝わってくる。

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