Oasis復活の報からおよそ1年。ついにイギリス・カーディフ公演を皮切りに日本国外でのツアーが幕を開けた。10月には日本公演も控えている中、日本国内の夏フェスでもツアーのマーチをまとった人が多く見られ、日本からの現地参戦組も多く見られる。マンチェスター公演に参加したお笑いコンビ・かが屋の賀屋による現地参加レポをお届けする。
INDEX

1993年、広島県呉市出身。お笑い芸人・タレント。東京学芸大学在学中にバイト先のコンビニで相方の加賀翔と出会い、2015年にかが屋を結成。2019年、2022年に『キングオブコント』決勝進出を果たしたほか、『第46回ABCお笑いグランプリ2025』でもファイナリストになるなど、数々のお笑いコンテストで活躍。個人としてもR-1グランプリ2021決勝進出を果たす。
賀屋少年にとって「遠い国のお話」だったOasisの解散。大人になった賀屋はイギリスへ
2009年、僕は16歳高校2年生だった。兄の影響でOasisを聴き始め、気付いたら登校中下校中犬の散歩中ずっと聴いていた。歌詞を見て、ほんまにこう歌っとんか? とか思いながら覚えた。暗記カードみたいに歌詞カードを見た。そして覚えた歌を、後ろに手を組んでねばっこく口ずさんだ。Wikipediaも読みこんだ。クラスで聴いているのはたぶん僕だけだった。それが嬉しかった。こんなカッコいいのを僕しか知らない、大好きなアジカンのゴッチも好きとインタビューで言っていた。後ろ盾もある。最高だ。カラオケで歌うと皆をびっくりさせちゃうので、1人カラオケでOasisを歌った。もしライブに行ってリアムに「お前も歌ってみるか?」と言われステージに上げられた時のために”Wonderwall”を練習した。『BECK』でそんなシーンがあったからだ、兆が一にもそんなことがあるかもしれない。
そんなバンドが解散した。びっくりした。Youtubeで繰り返し見たライブ映像、これを僕は生で観ることはできない。そうか、そんなこともあるか。伝説のバンドってそういう感じだもんな。これも『BECK』で読んだな。でも観たかったな。お兄ちゃんのギターぶっ壊すって何? ライブ直前でキャンセル? そんなんして誰かにめっちゃ怒られないのか? 色々思うことはあったが、それもどれも遠い国のお話だったので、変わらずそこからもずっと聴き続け、解散も正直ピンときていなかった。
上京してOasis好きの人と話をする機会も多くなった。その人たちはOasisを生で観たことがあって、会場まで向かうまでの興奮、Oasisが登場してからの熱狂、終わった後のエグい余韻、それらを伝えてくれた。話を聞いた後、Oasisを聴いて想像してみたがどうもピンとこなかった。こういったことを2年に1回くらい繰り返し2024年、Oasisが復活するというニュースが飛び込んできた。
「え? Oasis復活するの? え? Oasis生で観れんの? え? Oasis生で観れんの!?」となった。
そして、「あぁイギリスでやるのか、じゃあ無理か、日本にも来ないかな、ん、あれ? 俺大人だぞ? もしかしたらイギリスとか行ける? 無理じゃない? イギリス行けんのか俺!?」となった。
Oasis好きで仲良くなった映像制作会社ディレクターで僕の個人のYouTubeにも関わってくれているマサヤスさんとイギリス応募してみる? ということになった。販売当日、応募しようとスマホでサイトにいってみると300000人待ち。は? 30万人? やばすぎる。でも一応30万人待ちの列に並んだ。こりゃ無理だなやっぱ、と思っていたらマサヤスさんから連絡が来た。
「2枚取れました」
「……嘘だろ!? 行けんのおれ!? Oasis生で観れんの!?」となり、速攻で「行きますありがとうございます」と伝えてマネージャーさんにも連絡して1年後のスケジュールを抑えてもらった。
1年後のスケジュールを抑えてもらうって何!? 凄いことしてないおれ!? 興奮しっぱなしでマサヤスさんと喜びを分かち合った。
相方にも「こんなこと一生ないから行ってきたら?」という最高の言葉をもらった。しかし1年後、かなり先だ。
日々を過ごしながら時々、スケジュールのアプリを2025年の7月にぺぺぺぺぺっとスワイプさせて、くっきりと表示されている「賀屋Oasisライブ」を何回も確認した。そしてそのぺぺぺぺぺがぺぺぺぺになっていってぺぺぺになってぺになった。そしてぺをする必要もなくなった。やばいもう今月だ……どうする!? ずっと嘘みたいだった。
INDEX
マンチェスターに到着。トイレの流すボタンのデカさにさえ興奮
当日、仕事を終えて羽田に向かいマサヤスさんと合流した。いいおじさんが2人ともツヤツヤしていた。海外に行くのも10年ぶり。興奮しないわけがなかった。14時間のフライトを終えあまり寝れず降り立ったイギリスの地、再合流したおじさん2人はあぶらのツヤツヤが強くなっていた。
我々はヒースロー空港からマンチェスターに向かった。翻訳機能を駆使して予約した列車に乗り込んだ。何回か乗り換えをしたのだが目的地があってることを確認するたびにおじさん2人はツヤツヤした顔を向かい合わせてガッツポーズをした。

マンチェスターピカデリー駅に到着すると、バカでかいポスターに写っているリアムとノエルが迎えてくれた。確実にウェルカムと言ってくれていた。観光客丸出しの僕は首からぶら下げたカメラでバシャバシャ撮った。マンチェスターの街並みは美しく、日本とは全く違い見るもの全てが嬉しかった。日本と違えば違うほど嬉しかった。タクシーに乗ったらすぐに運転手さんがおそらく友達と電話し始めた。オッケーオッケー! 日本ならバレたら即クビ! 最高! そこらじゅうでタバコを吸っている! 最高! そういう光景を見るたびに、僕はマンチェスターでOasisを観るんだ! という気持ちがどんどん高まっていった。

ホテルに到着しチェックインする時、受付のお兄さんが「まさかOasisかい?」と聞いてきてくれた。僕らは「オフコース!!」と親指を立てた。
「日本からだと飛行機何時間?」
「14時間!」
『14時間!? Oasisを観るために!?」
「オフコース!! エコノミーシート!!」
「オゥ! クレイジージャパニーズ!」
めちゃくちゃいい感じで迎えてくれた最高の受付のお兄さん。クレイジージャパニーズはホテルの部屋に入り、色紙くらいのサイズのデカすぎるトイレの流すボタンを見てまた喜んだ。

ここで1泊して次の日にOasisのライブだ。その日はOasisがファンであるマンチェスターシティの本拠地であるエティハッドスタジアムに行き、なんだかピンとこないイギリスのごはんを食べて、Oasisを聴いて過ごした。