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池松壮亮が語るオダギリジョーとの挑戦。映画を愛する俳優たちの、社会へのまなざし

2025.9.25

#MOVIE

鑑識課警察犬係に所属する刑事・青葉一平の相棒は、彼にだけ「着ぐるみのおじさん」の姿で見える警察犬──。オダギリジョーが手がけた異色のドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』が、映画というフォーマットを得て、さらなる混沌と哲学をまといながら、笑いと違和感を引き連れてスクリーンを駆け抜ける。

ドラマ版から引き続き主演を務める池松壮亮が、オダギリが率いる現場でチームとともに築いたグルーヴ、そして時代や権力によって形を変える「正義」にどう向き合うべきかについて、率直に語ってくれた。本作を生み出したオダギリジョーの背中から受け取った、表現者としての覚悟も、池松の言葉の端々ににじむ。混迷の時代にこそ求められるまなざしが、スクリーンの内外に交差する。

「オダギリさんの背中から、覚悟を学んだ」。池松壮亮が見た表現者の姿

─池松さんは、過去のインタビューでオダギリジョーさんを俳優史に残る超重要人物だとおっしゃっていました。そんなオダギリさんから本作『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』の撮影、制作を通して受けた影響などあれば教えてください。

池松:どういう文脈の中でその言葉が出たのかは覚えていないんですが、今でもその通りだと思いますし、とても尊敬しています。他の作品でも共演させてもらい、今作のドラマシリーズが始まって5年の間、オダギリさんの背中を見て様々なことを学んできたと思っています。

オダギリさんが様々な苦労をされて本作の完成まで辿り着かれたのを間近で見ていました。この作品世界の住人として、ここまで長い時間一緒にいられたことはとても幸せなことでした。これだけ独自の感性で、自由で型破りで、他のどれとも比較できない映画を作ってくれたこと、そしてその映画がまもなく無事に公開されることに、喜びと安堵の気持ちでいっぱいです。

池松壮亮(いけまつ そうすけ)
俳優。1990年7月9日生まれ。福岡県出身。トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』でスクリーンデビューを飾る。その後数多くの作品に出演し、これまで数々の映画賞を受賞している。昨年は『ぼくのお日さま』、『本心』、今年は『フロントライン』など数々の話題作が公開。2026年放送予定の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では豊臣秀吉役を演じる。

─具体的にオダギリさんのどのような姿勢に、心を動かされましたか?

池松:5年前のパンデミックの時に、これまでの価値観が根底から全て覆されるようなことを世界中が経験して、誰もが見えない未来に混乱している最中で、オダギリさんが出した答えは、このオリバーな犬でした。その自由を勝ちとるような、人生の困難を打破するためのユーモアの力は、僕にとって衝撃的で、かつラジカルな力を感じました。混沌としたカオスな世界を生み出し、笑いという抵抗で、そのカオスを包み込み抱擁するような世界観を作り上げられました。ですから先ずは、この作品そのもののもつ力や根底にある動機のようなものに心を動かされました。

池松:今作は、2021年と2022年に放映されてきたドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』の作品世界をいったん解体し、ドラマシリーズを継承しつつ、新たな世界を生み出していると言えます。物語は脱線し、迂回し、その行きつ戻りつの中で、話の全容や現実を捉え直していけるような不思議な魅力のある作品になっています。そこにはオダギリさんの映画に対する気持ちや、芸術に対する揺るぎない信頼が込められており、深い内省と様々な道のりの足跡を感じます。信念と覚悟をもって望んだ先にある作品のもつ厚みを感じました。とっても楽しく愉快な作品ですが、とても挑戦的で、強い意志をもった意欲作だと思います。

池松壮亮が語る、映画の芸術性と余白

─池松さん演じる青葉一平にだけ、相棒の警察犬が着ぐるみのおじさんの姿で見えてしまうというユニークな設定に始まり、カオスがさらなるカオスを呼び込む本作。その物語は、今SNSを中心に盛り上がりを見せている「考察文化」に対して、どこか軽やかに背を向けているようにも感じられます。こうした、解釈の余白がたっぷりと残された作品に臨むとき、演じる側としてはどのような意識やアプローチを持たれるのでしょうか?

池松:その作品によっても異なるものだとは思いますが、余白をそのまま余白として大切にすること、そして台本に信頼を置いて楽しむことは俳優にとって、とても重要なことだとは意識しています。映画を観る喜びってあらすじだけでは決してないですよね。人が生きているという、寛大な豊かさみたいなもの、映画にはそれを捉える力があると思っています。

池松:今回の撮影では、俳優という枠におさまらない、表現者という気質に近いオダギリさんのこれまで培われてきた感性を、俳優陣たちが様々な解釈を持ち寄って形にしていく。みんなで可笑しな冒険を楽しむような感覚で演じていたように思います。

─俳優陣たちの解釈が一つではなく、あらゆる解釈が許されながら演じるというのは、映画に豊かさをもたらしてくれそうですね。

池松:そうですね。ドラマではもう少しストーリーラインが重視される局面が多かったですが、映画では見終わった後に、その作品そのものの輪郭や、根底にある動機、小さな願いのようなものが浮かび上がってくるような作りになっていると思います。

─池松さんは、大学時代に映画制作を学ばれ、大の映画好きであることを公言されています。観る側としても、余白がある映画に惹かれますか?

池松:もちろん大好きです。余白にも様々あって。今作のもつ余白と一般的に言われる映画の余白とは少し違っているようにも思います。

例えば、絵画を鑑賞する際に、この画家はどういった時代背景で何を捉えようとしてこの絵を描いたのだろうかと鑑賞者側がそこに想いを馳せるじゃないですか。それと同じように、映画にも広い芸術性があると思っています。額面にあるものの背景とその奥行きを見ることに芸術性は成り立つものだと思います。

─先ほど、ドラマはストーリーラインを重視することが多いとおっしゃっていましたが、今回このシリーズでドラマと映画、両方演じられて、その二つの違いを意識することはありましたか?

池松:映画ならではの遊びが出来た部分はたくさんあると思いますが、そこはあまり意識していません。映画を作り上げるための「設計図」となる脚本をもとに、一平を楽しんで演じられればと思っていました。あの「設計図」なので、どうしたってドラマとは別次元に行きますよね(笑)。

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