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高城晶平が振り返るceroの5年。大切だったのは、「3人でいる」こと

2023.5.1

#MUSIC

日本語でつくることは、自分のなかで重要。

―このメディア『NiEW』では記事を英語と中国語に翻訳して、グローバルにも発信することを目的のひとつとしているのですが、高城さんは楽曲をつくる際にグローバルな視点をどの程度意識していると言えますか?

高城:たぶん荒内くんとかはそこも意識して音符と向き合ってると思うんですけど、ぼくはあんまり意識はしてないかもしれない。でもしいて言えば、日本語でつくり続けることは自分のなかで重要なポイントだと思っていて。「グローバル=英語で歌う」ではないというか、例えば、ceroの3人が好きなブラジルの音楽は主にポルトガル語で歌われていて、それでも世界的なクラシックになっているものがいくらでもあるわけで。しかも、ポルトガル語じゃなかったらああいう音楽は生まれないというか、言葉に導かれることでその土地固有の音楽になると思うんですよね。

それで言うと、日本語もそういう開かれ方がもっとできるはずなんだけど、1990年代くらいまでにひとつの定型みたいなものが完成していて、それを離れようとしないところがある。ラップの世界ではいろんなトライが行われてると思うんですけど、ラップではなく歌でも日本語の使い方はいくらでもあるというか、そこをやる余地はまだまだあると思ってます。上ものとして和楽器を入れるとかじゃなくても、日本らしさ、アジアらしさみたいなことはいくらでも感じることができて、それこそ坂本龍一さんとかはそういうことを世界でやってきたわけで。なので、そこを引き続きやっていくことが、結果的にグローバルな音楽を考える契機にもなるのかなと思いました。

―まさに、ceroは日本語によるオリジナルなフローをこれまでも追及してきたと思いますが、その点で言うと新しいアルバムではなにか意識したポイントはありましたか? 全体的な印象はそれこそ叙事より叙情というか、ソフトな歌い方が増えましたよね。

高城:はしもっちゃん家のアパートはあんまり大きな声を出せなくて、その感じが本チャンまで受け継がれたのはひとつあると思います。あとは、今回エンジニアをやってくれた小森(雅仁)さんが声をすごく大事にしてくれて、自分の声の美味しい部分をわかってくれたなって。

これまでのceroは「歌は二の次で大丈夫なんで」みたいなスタンスだったんですよ。歌に対して自信がなかったし、「ぼくはシンガーってわけじゃなくて、たまたまぼくが歌ってるだけなんで」っていうエクスキューズが常にあったから、エンジニアさんも察してくれて、「歌より全体の構造を見せたい人たちなんだな」って、歌はちょっと引っ込め気味にしてくれて、ぼくらもそれでいいと思ってたんです。でも今回小森さんと特にそういう話はせずにやったら、自分たち史上一番歌声がドンと出てて、それが自分にとってはすごく新鮮で。特に“Nemesis”は歌が主体の楽曲だから、「俺の声が引っ張ってる曲だ。結構いいじゃん」と思えて、全体にも影響したと思います。

―2010年代以降のサウンドデザインにおいて、声の距離感はグローバルに見ても非常に大きな要素になっていますよね。

高城:たしかに、ASMR以降みたいなことですよね。小森さんは宇多田ヒカルさんをはじめ、ホントにいろんな人と仕事をされているし、トレンドをちゃんと押さえつつ、それをceroにインストールするならどういうバランス感がいいのかをすごく考えてくれたんじゃないかなって、聴き返してみて思ったりします。

―この作品が世界でどんな風に聴かれるかも気になります。

高城:いままでの作品のなかでも、一番普遍性を持った作品のような気がしているので、「どれから聴いたらいい?」って聞かれたら、『e o』を勧めると思います。『WORLD RECORD』や『My Lost City』は自分の身の回りのこととか、日本国内のことと密接に紐づいてつくったものだから、その文脈なしで聴いてもらって、良さがわかるのかちょっと疑問ではあったんですけど、『e o』はそういう文脈を全部取り払っても、「イケてるね」と言ってもらえる余地があるんじゃないかなって。

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