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石若駿×馬場智章対談 少年時代からの盟友が、互いの軌跡を振り返る

2024.9.18

#MUSIC

石若駿が渡米を選択しなかった理由――武満徹や高橋悠治の偉業に触れて考えた「自分たちのアイデンティティ」

ーお互い親友でありライバルだった。

馬場:僕が高校に入った頃、駿は東京に出て日野皓正さんはじめ有名なプレイヤーとガンガンやるようになってました。それを僕は羨望の眼差しで見ていたんです。大切な友達には変わりないのですが、どこか羨ましいさみたいなものも感じていた。でも、大学から渡米したことで、そういう気持ちがなくなってフラットに物事を見られるようになったんです。

石若:そうかあ。僕はアメリカで活動している智章のことを「すごいなあ」と思っていました。自分が好きなプレイヤーと共演したり、同じフェスやイベントに出てる。僕もアメリカで活動したいな、と思っていた時期がありました。

ニューヨークで活動していた当時の馬場智章

ーなぜ、渡米しなかったのでしょう。

馬場:そうそう。来たらいいのにと思ってた。

石若:大学(東京藝大)で現代音楽と呼ばれるものを演奏したり触れる機会が自分は多かったんです。藝大ではオーケストラ志望のプレイヤーやコンペティションで賞を目指すプレイヤーも多くいましたが、なんというか、自分にとって現代音楽に携わる時の気持ちやワクワク感が心地よくて楽しかった。もっとリアルタイムで、自分のバックグラウンドがダイレクトに反映される音楽だし、引き出される音楽だなと思いました。ここ60年くらいの由緒ある現代音楽の作品を学ぶ上で、リアルな継承を先輩や先生方から耳にしたりすることもワクワクしていましたし。武満徹さんの作品をはじめ、アジアの作曲家の作品を演奏した時の気持ちや、近しいところですと作曲科の方々の新たな響きを模索したり、新曲の世界初演に立ち会って感動する度に、「演奏家として自分はこういうことをやるべきかもしれない」と思ったんですよね。

ークラシックやジャズという海外の音楽をやる時に、日本人としてのアイデンティティや独自性をそこにどうやって落とし込むのか。それは大きな問題ですね。

石若:そんなようなことを考えていたので、その時はアメリカをちょっと疎遠に感じていました。リアルタイムでニューヨークで起こっているジャズシーンには興味を持っていたし、相変わらず好きではあったんですけどね。

馬場:駿が日本にいた理由をいま初めて知りました。僕もアメリカで活動しながら「日本って何なんだろ?」って考えていたんです。というのも、ジャズっていうアフリカやアメリカから生まれた音楽を、いろんな人種の人たちと演奏するなかで、音楽を通して歴史や文化を勉強する機会も多かった。アメリカに渡り彼らと会話をするなかで、自分が日本の文化をあまり知らないことに気づきました。日野皓正さんやタイガー大越さんみたいにアメリカ歴が長い人は、アメリカ文化に通じているのと同じくらい日本文化に通じていて、それぞれを噛み砕いて自分のものにしている。最近、そういったジャズミュージシャンが増えてきたと思うんです。アヴィシャイ・コーエンだったりとかティグラン・ハマシアンだったりとか、地域性のある音楽をジャズとかいろんな音楽のフォーマットにフュージョンしている。黒人文化や白人文化を尊重すると同時に、日本の文化も尊重してジャズをやっていくにはどうしたらいいんだろう、とすごく考えました。

ー2人は別々の場所で同じようなことを考えていたんですね。そして、馬場さんはNY在住の日本人ミュージシャンによるバンドJ-Squadのメンバーとしてデビュー。石若さんはソロ活動に加えて、CRCK/LCKSやものんくるなど様々なバンドで活躍します。

馬場:アメリカにいる時は、駿のFacebookを通じて「いま日本にこんな面白い人が出て来たんだ」って日本のシーンを追いかけていました。江﨑文武(WONK)、額田大志(東京塩麹)、常田大希(King Gnu)とか、新しい才能を持つ人達と駿を通じて知りあって、日本に新しい音楽シーンが生まれていくのを興味深く見ていました(参考記事:藝大出身者が語る、刷新すべき音楽教育 江﨑文武×石若駿×額田大志 / CINRA)。

石若:当時は、日本には面白いミュージシャンがいっぱいいるのに、どうしてそれが世界に広がらないんだろうって思っていたんです。そのためには東京で強力なシーンを作らないとダメなんじゃないかって、先輩や仲間と毎日のように話をしていました。当時はみんな激アツにとんがってたから。

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