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NOT WONK加藤が語る『FAHDAY2024』と街の文化。再開発される街で守りたいもの

2024.9.17

#MUSIC

僕は正直、このまま新しいものを欲し続けても幸せな未来が見えてこない気がするんですよ。

ーメッセージや問題提起の前に「楽しい」が先にあるアクションは、NOT WONKにとって初めてと言っていいんじゃないかと思うんですよ。

加藤:ははははは。確かにそうかもしれない。

ー楽しさと歓びが先にあって、その中に個々の気づきがあればいいっていう。そこが、以前の加藤さんと違うところのような気がするんですよね。

加藤:そういう意味では、自分なりに新しいものを作らないといけない! っていう思考だったのかもしれないですね。

ーでも、事情と建前で作るものではないですからね。あくまで一人ひとりの命の交感であるっていう部分は一切ブレてない。

加藤:だって、無理して何かを作らなくても、そこに文化と生活があるんだから。つまんねえと思って見ていた街の景色も、ちょっとだけ見方を変えてみれば面白いものになる。点でしか見られていなかったものも、もっと大きくて緩やかな流れの中で形成されている。そうやって角度を作ることが何よりも大事で、その角度を見せるっていうのが『FAHDAY』の大事な部分なんじゃないかなって思います。アートの役割ってそういうことだと思うし。

ーまさにそうですね。今の視座を広げたり、違う角度や選択肢を見せたり。音楽はもちろん、アートの力はそこにあると思う。自分なんて、社会なんて、世界なんて——そういう考え方に偏りやすい時代だと思うんですよ。システムはとっくに崩壊していて、戦争も虐殺も未だに止まなくて、リアルにもインターネットにも悪意が蔓延している。そういう現実がどうしたって目前に広がって、先にエンドロールを見せられているような気持ちになることが多い気がするんです。その中で、今あるものをどうやって面白がって笑顔で生きていくのかというミニマムな発想こそ、実は一番大きな世界に繋がるものだと思うんですよね。

加藤:これ以上に新しいものを買ったり、新しいものを作ったりすることで、果たしてスゲえ幸せな未来が訪れるのかってことですよね。僕は正直、このまま新しいものを欲し続けても幸せな未来が見えてこない気がするんですよ。新しいものを作ったり新しいテクノロジーに慣れていくことも大事かもしれないけど、それは目的じゃなくて手段じゃないですか。いつかお金持ちになったら家とか建てたいですけど(笑)、幸せの第一定義はそれだけじゃない。逆に言ったら、そうやって何かモノを手に入れ続けるのが幸せだとしてしまうと、家を建てた後には何を買わなくちゃいけないの? ってことになるんです。それじゃあもう、キリがないですよ。

やっぱり自分にとっての幸福は度数や比較や物量で量れるものじゃないし、それぞれの幸福の在り方がそこに集まっていて、同じように息をしているっていうことこそが面白いんです。それが僕の思う「表現の交換」なんですよね。EGO-WRAPPIN’のライブを観るのも、苫小牧でクロゴメさんが作ってる開運ラーメンっていうめちゃくちゃうまいヴィーガンラーメンを食べるのも、苫小牧で体験するためにかかるお金は違うけど、得られる幸せの方向は同じだと思うから。その「同じ」という感覚は、さっき言った自分の表現とイデオロギーと街の暮らしが融解していった感じに近しいんですけど。あくまで個人の幸福、生活の表現がそこにあるっていうのは、オルタナティブやパンクっていう言葉を知らなくても理解できることのはずだから。そこにスッと置いておけば、誰もが勝手に触れられる1日にしたい。キュレーションは僕ではあるけど、自由に遊ぶ上では僕の顔なんて必要ないし。

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