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NOT WONK加藤が語る『FAHDAY2024』と街の文化。再開発される街で守りたいもの

2024.9.17

#MUSIC

「街の文化」は、新しく作るものじゃない。日々の営みそのもの。

ー『dimen』のインタビューをさせていただいた際、コロナ禍に入る直前の時期にパニックの発作を起こすようになってしまっていたと伺いました。そういう自分を解き放つために、加藤さん自身が人に開いていったとも言えますか。

加藤:そうですね……自分から一歩踏み込んだっていうのは、そういうことだと思います。それこそ見方も景色も変わりましたし、自分をもっと解き放っていいと思えたキッカケだったと思います。

で、その「営み」とか「街の文化」に対する見方の根っこにあるもので言えば——これは『FAHDAY』をやるにあたって段階をすっ飛ばさないための話なんですけど、2022年に苫小牧で『TOMAKOMAI MIRAI FEST』っていうイベントが始まったんですよ。市長の岩倉(博文)さんを委員長に据えた苫小牧都市再生プロジェクト委員会が主催となって、「地方に眠っている新しいカルチャーやその土地が持つ魅力を再定義し、世界へ発信することを目的に行う」と看板を掲げ、新たな観光資源としてフェスを立ち上げたようなんですけど。そのフェスは東京に本社を置くプロダクション「ASOBISYSTEM」が事業として地方創生を請け負って企画・制作し、その所属アーティストが多く出演したフェスでもあるんですよね。で、それをやってみたら市長がエラい楽しかったらしく、盛り上がって「苫小牧にクラブを作ろう」(※関連ツイート)みたいなことを言ったらしいんですよ(笑)。

ー本当にわかりやすく盛り上がってる(笑)。

加藤:でもね、すでにCLUB ROOTSという今年で18周年になるクラブがあるし、他にもBar BaseとかRock Bar Jamとか音楽を聴いて遊べる店もある。苫小牧で長年やってきている人達がいるんです。そんな中での市長の発言や、フェスのコンセプトの割には地元の音楽シーンを蔑ろにしたような形の開催だったので、流石に僕も納得できなくて。だから僕は、そういう苫小牧で長年場所を作り続けてきた人達と一緒に「俺達がやってきたことを見ていないじゃないか!」ってガツンと怒るのが一番いいのかなと思ったんですけど、意外と苫小牧のみんなはサラッとしていて。「俺達がやっていることとは関係ないからね、俺達は俺達でしょ」っていう感じだったんです。

加藤:で、それこそ「表現」とか「文化」という言葉の話になってくるんですけど、たとえば僕が苫小牧駅からBar Baseに歩いて行くまでに、どの店をハシゴして、何を食って、最終的に何を飲むのかを考えるっていうのも立派な文化だと思うんですよ。そもそも「カルチャー」なんて誰が綺麗に定義できるんだろうって思うし、ある場所に根ざした人達の営みが繰り返されることで形成されていくものが「文化」のはずなんです。だとすれば、自分達の街でずっと続けられている営みを「文化」と呼びたかったし、自分の意志で生活を送っていること自体が人生の「表現」なんだって思ったんですよ。よく言われる「新しい文化を作ろう」とか、何言ってんの? って感じですよ。

ー作るも何も、人と人が交錯する場所にもうあるじゃないかと。

加藤:そう。それに、そもそも誰かが作れるものじゃないんですよね。一人ひとりの中ででき上がったものが交錯したり、まとまったりしながらでき上がっていくのが文化なので。街場を行き来して、人と人が出会って、いろんなものを共有して。そういうおびただしい量の足跡と痕跡が街とそこでの生活を形成しているんですよ。僕はそれこそを文化と呼びたいし、それが一人ひとりの命の表現だと思う。絵を描いたり音楽を作ったりしなくたって、それぞれの生活の往来こそが表現なんですよ。

僕で言っても、音楽家だからって音楽だけを作っているだけでいいはずがない。自分は、社会と接続された存在として生きて、その中ではじめて自分を表現しているんですよ。それは自分以外の誰もがそうだし、誰もが気づけることだと思う。それに気づいてもらいたいから『FAHDAY』をやるっていうことでもないんですけど、楽しかったり嬉しかったりする瞬間の中に「自分がどれほど美しい暮らしをしているのか」っていう気づきがあればいいなっていうのは思いますね。

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