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20代を迎えたポップスターは自身の変化と向き合う
ビリーアイリッシュはここ数年で様々な変化を経験した。それは名声との向き合い方について、自身の身体や声について、過去の恋愛について、クィアネスについて。今作の主題のひとつは「変化」だろう。
デュア・リパ(Dua Lipa)とのポッドキャストにて、ビリーは自身の声についてこのように語っている。
(18歳から21歳にかけて)声が完全に変わった。声が変わるのはトリップみたいなものだった。ショックだったし、どうすればいいの?って感じだったんだけど、最近では「OK、変わってしまったけど、それが自分にも分かる」みたいに感じてる。
ずっとこのやり方でやっていて、うまくいっていたのにできなくなってしまう。変化を受け入れたり、乗り越えたりするのは難しい。
Dua Lipa: At Your Service Billie Eilish:On growing up より
さらに、このアルバムで象徴的に扱われている「青」という色についても、自身の価値観の変化を語っている。
自分でも変だなって思うんだけど、昔から青ってあまり好きじゃないんだよね。それなのに、ずっと髪を青く染めたりしてさ、バカみたいだよね」とアイリッシュは言い、さらに続けた。「でも、実は青くしたかったわけじゃないんだ。ある時、青味の強いヘアトナーをうっかり使ったせいで、ラベンダーみたいな色になっちゃって……その後、髪の色がどんどん青くなっていって、とうとうあの青髪になった。あれは最悪だったな。何カ月もかけて色を落とそうとして、やっとグレーっぽい色になった。でも、この2年間は『ちょっと待って、青って私の本質を表す色じゃない?』って考え続けていた」
ビリー・アイリッシュが語る、再出発への決意|Rolling Stone
そんな青色を冠したアルバムのクローザー”BLUE”は、それ自体がアルバム全体を象徴するようなコーダ だ。これまで歌詞に登場してきたモチーフが再登場し、作品の結論を導き出す。ダークかつソフトなトラップ部分を経由して、カタルシスを感じさせるストリングスにより、リスナーは海の底へ沈んでいく。
自身の変化と呼応するように音楽性も変化させながら、ビリー・アイリッシュは20代の新たなペルソナを手にした。私たちは彼女の世界に魅了され続けている。
But when can I hear next one?(でも、次はいつ聞けるの?)
”BLUE”