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作り手の柴田と聴く人双方にとって、一種の「お祭り」のような存在の『Your Favorite Things』
―今回の柴田さんのアルバム『Your Favorite Things』も、ダンスミュージック的な要素が一段と強まっていますよね。
柴田:そうですね。身体で感じる音楽の喜びに一層敏感になってきている気がします。クラブで踊るのとかはいまだに恥ずかしくてちょっと苦手なんですけど、音楽で踊るということって、数ある人間の営みの中でも最強の喜びの一つだよなと思うんです。私生活の中でクソみたいなことが起こると、反比例するみたいに余計にリズムの楽しさにハマッていく感覚がありますね。
夏目:今回のアルバムは、「享楽的」って言えるゾーンに入ってきているなと思ったし、マジでParliamentのライブ盤『ライヴ!! Pファンク・アース・ツアー』(1977年)みたいじゃん、って思ったな。言い方を変えると、結構危険なゾーンへの入口にいるっていうか、ついに柴田さんがワンダーランドへのチケットを手にしたな、と思いました。
柴田:(笑)。ここ6〜7年くらい、なんとか一人の大人として調和と共生の精神を持って周りをがっかりさせたり親を泣かせたりしないように生きてきたんですけど、そこにはやっぱり傷つけ合ったりとか矛盾もたくさんあるよなと再確認して。自分の中の享楽的な気持ち……もっというと反道徳的なものへ衝動みたいなものをいびつなかたちで抑圧してきたよなあ、と気付いたんです。
最近はむしろそういうものを無理してひた隠しにしない方がいいんじゃなかと思えるようになりました。そしたら、俄然音楽をやるのが楽しくなってきちゃって、ちょっと怖いくらいです。「音楽、最高!!」っていう気持ちが爆発している状態です。今。
夏目:いいなあ。このアルバムには本当にそういう気持ちが渦巻いていると思う。

柴田:けど、そういう享楽的な気持ちを持ちながら同時に人間を愛していかねばならないとなったとき、どうやって今後この社会を生きていけばいいのやら……と冷静に思っている自分もいるんですよ。音楽の楽しさへハマり過ぎて、周りの人を愛するっていう責任を取れなくなっちゃうんじゃないかっていう恐怖があって。だからこそ、そのためにも私には音楽を作るしか道はないじゃん! って思うんですけど。
夏目:このアルバムは、そういうやばいゾーンの中に、「誰でも入ってきていいよ」っていうスペースを設けてくれている感じがするな。
―お話を伺っていると、『Your Favorite Things』という作品は、作り手である柴田さんと聴く人双方にとって、一種のお祭りのような存在なのかもしれないですね。祭りにも踊りは欠かせないし、日常の安全弁である非日常として存在しているという意味でも。
柴田:いや〜、本当にそうですね。音楽をもって荒ぶる何かを鎮守しているんだと思います。
夏目:そう考えると本当にやばいアルバムだな〜(笑)。奇祭としての『Your Favorite Things』。最高だね。

柴田聡子『Your Favorite Things』

2024年2月28日発売
価格:3,300(税込)
DDCB-12121
1. Movie Light
2. Synergy
3. 目の下
4. うつむき
5. 白い椅子
6. Kizaki Lake
7. Side Step
8. Reebok
9. 素直
10. Your Favorite Things
Summer Eye『大吉』

2023年3月21日(火)リリース
- 失敗 (new mix)
- 求婚 (new mix)
- 湾岸
- 双六
- 甘橙
- 人生 (new mix)
- 水坑 (new mix)
- 白鯨
- 大吉