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柴田聡子と夏目知幸対談。長い付き合いの中で初めて語る、お互いの音楽と人生の移ろい

2024.3.11

#MUSIC

「やっぱり夏目くんの歌には、愛しさをすごく感じますよね。人間への真心がスゴいし、優しい」

夏目:「歌を通じて物語を語ろうとしているか?」っていうさっきの質問に戻ると、僕は、お話の形式を作ったうえで、その中に出てくる人物のキャラクターを掴んでもらえたら成功だと思っているんですよ。何十話をかけたドラマとかでも、キャラクターが全然描けてないものってあるじゃないですか。

その逆に、アキ・カウリスマキとかホン・サンスの映画みたいに、派手な起承転結があるわけじゃないけど、ちょっと会って話してみたくなるくらいキャラクターが滲み出ているものってあるんですよね。そういうものの3分間ポップスバージョンができたらいいなと思ってますね。

―まさしく、夏目さんの歌にはそういうキャラクターがよく登場するように思います。なんというか、描かれている人物が愛しくてたまらなくなる感じ……。

柴田:わかる! やっぱり夏目くんの歌には、愛しさをすごく感じますよね。人間への真心がスゴいし、優しい。

夏目:結構愚かしい人間ばっかりを描いているけどね(笑)。でも、むしろそっちの方が人間らしいってことでもあるじゃないですか。

柴田:それこそが真心に違いないと思うなあ。

夏目:ソロでやっていこうと思った時、何を描きたいのかよくわからなくなっちゃったんですよ。正直、みんなが楽しく元気に生きていければそれでいいし、それ以上言うことないじゃないですか。そういうときに、逆に愚かで情けない人物をみたてて、そいつをキャラクターとして動かしていったら面白いんじゃないかと思ったんですよ。

―<そんなことより あのコえっちだったナー>っていう元も子もない言葉で締められる“大吉”とか、いかにもだめだこりゃっていうキャラクターだけど、なぜだか強烈な愛おしさがありますよね。

Summer Eye“大吉”

柴田:本当に。ああいうことを思える人はもはやカッコいいと思いますけどね、私は(笑)。

夏目:やっぱり、最終的には『ドラゴンボール』の亀仙人みたいな存在になりたいんですよ、僕は。おじいさんになってもパンティーを見て鼻血を出しちゃう、そういうヤツ。こういう話をすると、大抵「何を言っているんだこいつは」って話になるだろうし、現代の価値観とは乖離しているのも自覚しているんですけどね。

けど、人間の愛おしさって、確実にそういうところにも宿っていると思うんですよね。そういうのと誠実さをどうやれば両立させることができるんだろうかっていうのは自分のテーマだし、結構本気で考えてますね。

柴田:今のSummer Eyeのクラブミュージックっぽさって、そういう感じともすごくフィットしているように思うなあ。

夏目:その感想は嬉しいね。昔のハウスとかダンスミュージックのレコードって、ずっと「Loveがなんとかで」みたいなシンプルなフレーズを繰り返しているだけだったりするじゃないですか。トランシーな状態で身体を動かしながら踊っているときって、簡単な言葉がポーンって投げ入れられると途端にそれが体中を巡って理解できた気になるんですよね。

そういう状態にいくと、具体的なエピソードを無理に物語のように組み立てて歌う必要もなくなっちゃう。その可能性に賭けていきたいっていうのはありますね。

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