INDEX
ダンスや音楽の力を借りて何かと向き合う。そうした生き方がわたしは好きなんです。
―ニューオリンズの街の風景のエレクトリックな要素も意識的に入れているそうですね。わたしはクラブミュージックへの言及が多くあるのを興味深く思いました。使われる音楽だったり、モナ・リザをナンパするファズがDJをやっていたり、「RAVE TO THE GRAVE」と書かれたTシャツが出てきたり。クラブミュージック文化と本作の関わりについては?
アミリプール:それがわたしで、わたしが大好きなものだからです!(笑)
―そうだったんですね(笑)。
アミリプール:クラブミュージックやそのシーンが好きなんですよ。ニューオリンズではジャズが有名でレイヴ文化はそれほど大きくはないのですが、そこはわたしの好きなものなので、映画のマジックとして街のエネルギーと融合させています。
ファズは作っていて本当に楽しいキャラクターでした。うっかりわたしの理想の男性を作ってしまったのかもしれない(笑)。まあ、目がチカチカするファッションだからずっと一緒にはいられないけど……。
彼は「テクノのブッダ」として見ることもできます。最初に登場したとき、一部の観客は派手なルックスのせいで悪い奴なんじゃないかと思ったかもしれない。でもそんな風に感じてしまった人は、ファズが持つブッダの側面には会えずに終わってしまいますよ(笑)。

―ははは。実際、ファズは魅力的な男性ですよね。ダンスでいえば、ボニーの息子チャーリーとモナ・リザが「ハッシング」と呼ばれる激しいダンスをするシーンも印象的でした。この映画において、ダンスは何を象徴していますか?
アミリプール:テクノやハウスといったクラブミュージックにハマる前の若い頃、わたしはハードロックやヘヴィメタルに合わせて、抱えていた怒りや焦燥感を身体ごと解放していました。だから、あのシーンは実際のわたしの経験からインスピレーションされたものです。
このシーンでチャーリー少年がハッシングをしている姿は、彼の本質的な部分が垣間見られるところだと思います。彼が自分の感情とどう向き合おうとしているのかが感じられるシーンですね。ダンスや音楽の力を借りて自分の感情と向き合う、という生き方がわたしは好きなんです。
このシーンですごくいいなと思うのが、「人生において何か壁にぶつかったときにこんな対処法があるんだよ」とチャーリーがモナに示しているところです。それはとても純粋なもので、彼女がはじめて人として受け取る贈り物でもあります。それはとても美しいものです。どんな状況であろうと、どんなバックグラウンドを持った人であろうと、音楽を通して違いを乗り越えてつながっていくということだと思います。それにモナは特殊な能力で他人も含めて何かをコントロールする存在なので、リラックスする方法をそこで学んだということかもしれませんね。
