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ニューオリンズは、カーニバル的にクレイジーなエネルギーがある場所。
―『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』の魅力はキャラクター造形の複雑さにあります。特にケイト・ハドソン演じるボニーはモナ・リザを助けもしますが、彼女を利用もします。貧しいシングルマザーのストリッパーというバックグラウンドもありますが、彼女のキャラクター像において重要だったのはどのようなものでしたか?
アミリプール:これまでさまざまな映画でストリッパーのキャラクターは登場してきましたが、多くの場合、こうあってはならないという警鐘のようなものとして、あるいは何か恥ずべきものとして描かれてきたように感じます。自分の人生のコントロールができていなくて、必死で生きているような……哀れみや憐憫の情を持たなければならない存在として、ですね。
わたしはたくさんのストリッパーに実際に会ってきましたが、わたしにとって彼女たちは頭の切れる働く女性です。彼女たちは自分が何を売っているのかはっきりわかっていて、相手とビジネス上の取引をしているだけなんですよね。わたしの目にストリッパーはそのように映ったので、ボニーにもそうした側面がもちろんあります。

アミリプール:劇中の彼女は喧嘩を吹っかけられたり暴力を振るわれたり、いろいろとつらい経験をするけれど、けっして誰かに助けを求めたり自分の境遇を哀れんだりせず、前進あるのみのキャラクターです。つまりボニーというのは、ボニー自身にとってのヒーローなのです。彼女のそうした部分にわたしは敬意を抱きます。
もちろん彼女に対して異なる見方をする観客もいるだろうけれど、わたしにとっては、自分と自分の息子のために懸命に生きている女性ですね。まあ、彼女はチャンスがあればいつでも何かを掴もうとしているから、財布は彼女の近くに置かないほうがいいでしょうけど(笑)。
―舞台となるニューオリンズのワイルドな雰囲気も魅力ですね。映画の舞台として、この街の魅力はどういったところにあると感じますか?
アミリプール:この映画を構想し始めたときに生まれたキャラクターの1つがニューオリンズでした。ニューオリンズへのある種の当て書きですね。実際にニューオリンズに行って脚本の執筆もしていますし、それ以前に若い頃は何度も遊びに行っていました。クラブのパーティーにもよく行きました。アメリカにおいて唯一無二の場所だと思います。音楽や食や遊びといったいろいろなものがミックスされているし、先史時代からの樹木や沼地までありますし。それに物価がそれほど高くなくて、学生や労働者がその辺で遊んでいる。多様な人間模様がミックスされた街なんですよ。くだけたゆるいエネルギーがある。
わたしにとってはカーニバル的にクレイジーなエネルギーがある場所でもあります。この映画自体、「クレイジーなのは誰か」を問いかけている作品ですので、そうした意味でもつながっていますね。また、モナ・リザはわたしたちの住む世界に、獣のようなものから人間へと生まれ直すわけですが、それならニューオリンズみたいなエネルギーを持った街がいいと考えたのです。
