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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

田中和将×高野勲対談 オルタナティブであり続けるGRAPEVINEの美学

2023.9.27

#MUSIC

あえて未完成。そこから生まれるバンドの躍動感

ー『Almost there』というアルバムタイトルは1曲目の“Ub(You bet on it)”の<世の中が素敵だと感じたなら あと一息ってとこさ>から取られてるのかなと思うんですけど、なぜこの言葉をタイトルに冠したのでしょうか?

田中:“Ub(You bet on it)”は自分に発破をかける部分もありつつ、バンドという活動と言いますか、生き方といいますか、これって到達したらおしまいな気がして。たとえば今回すごく楽しいレコーディングで、ライブでやるのが楽しみなんですけど、出し切った感は一切ないんですよ。出来に手応えは感じますけど、達成感とかそういうのは一切ない。

作ってから「もうちょっとああいう曲もやりたかったな」とかいつも思うし、ずっとそうありたいというか。そういう意味で、「もう一息、もう一息」と言いながら、このバンドを転がしていければいいなといつも思ってます。何か極まったり、自分の手法みたいなのが完成しちゃったら……しちゃったような人もいるじゃないですか(笑)。

ーでもそうなりがちですよね。キャリアを重ねると「これが自分だ」っていう型が決まっていく。

田中:そうなりたくないなっていう感じはあって、「またちゃうもん持ってきました」みたいなことを、ずっとやっていたいなと思います。

高野:その話に通じるかもしれないけど、自分はアルバムって、完成したら後からあんまり聴かないんですよね。だからライブで困るんですけど(笑)、その未完成な感じから始めるとまた変わるんですよ。それが楽しい。

再現性も大事だけど、改めてやってみると、「やっぱりこっちがいいな」とか、作ってるときと気分が変わってたりするじゃないですか。新しい曲に限らず、古い曲をやり直すときもそう。そういう感覚って、演奏とかライブの出来に出てくると思うんですよ。演奏してる人は同じでも、そのときの感覚で違う躍動感が出たり。自分が好きなのも大体そういうことやってる人たちで、すっげえ上手くてもそこは割りとどうでもいいというか。

ー完成されちゃってるものじゃなくて、ある意味未完成でもどんどん変化し続ける方がいい。今の話はまさにGRAPEVINEのライブであり、バンドそのものの持つ魅力の大元の話だと思います。完成されていて、パッケージングされていて、同じものを毎回ちゃんと提供する、それがプロだって言う人もいるかもしれないけど……。

田中:お客さんもそういう人が多いでしょうしね。レコード通りやってほしいっていうのもあると思いますし、それは難しいところだなとは思うんですけど。でも僕はやっぱり人のライブを見てて、来るとこで来てほしいというか、せっかくライブなのに、レコードみたいなダイナミクスやったら嫌じゃないですか。アレンジが同じだとしても、ダイナミクスみたいなもんがもうちょっとあればいいのにっていつも思うんですね。

ーニューアルバムの曲もライブで聴くとまた違ったダイナミクスが感じられるだろうし、そういうGRAPEVINEのライブに一度でも足を運んでもらえたら、音楽の楽しみ方について、何か気づきを得てもらえるかもしれないですよね。

田中:そうですね。頑張ります。

高野:GRAPEVINEの取材で言うのもおかしいかもしれないけど、GRAPEVINEのライブ以外もいっぱい見た方がいいなと思います。ライブに限らず、インプットとアウトプットが気楽にできる時代だから、みんなもっとやったら、楽しみ方もより変わると思いますけど。

田中:それは本当にそう思う。いろんなもの見たり聴いたりした方がいいですよね。

ーちなみに、最近下の世代で気になる日本のバンドとかっていますか?

高野:バンドじゃないけど、大石晴子さん。GRAPEVINEのライブに来てくれて、ご本人にも伝えました。「日本人のアーティストで一番聴いてます」って。

田中:今はシンガーソングライターの方が強いかな。で、いいバンドつけてくる人が多い。そこに負けないためにはどうしたらいいかっていうライブを、自分たちはやりたいんですよ。日本のロックバンドみたいなライブをやってるとね……僕らも日本のロックバンドなんですけど、日本でかっこいいとされているようなライブをやってると、大石晴子とか、カネコアヤノとか、奇妙礼太郎とか、折坂悠太とか出てきたら、全部持っていかれるんですよ。かっこつけてロックっぽいことやったり、洋楽っぽいことやったり、一生懸命してても、絶対勝てない。僕が知らないだけで、かっこいいバンドもいっぱいいるのかもしれないですけど、少なくとも最近はあんまり見てないな。

ー折坂くんは象徴的かもしれないですね。彼は定期的にバンドメンバーを変えていて、それこそ未完成さみたいなものを保ちながら変わっていける。それはシンガーソングライターという形でやってるからこその強さな気がします。

田中:中村佳穂ちゃんもそうやけど、そういうシンガーソングライターの方は、個性が強いし、バンドもいいの持ってきよるなと思うんですよね。だからそういう人たちともし対バンすることになったら、負けへんようにやらなあかんし、そういうバンドでありたいですね。同じように並べて語られるようなバンドにはもう……申し訳ないけど、こっちは横綱相撲なんで。

GRAPEVINE『Almost there』

2023.09.27 Release

●初回限定盤(CD+DVD) VIZL-2228/¥5,720(税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2228.html
●通常盤(CD) VICL-65875/¥3,520 (税込)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-65875.html
●VICTOR ONLINE STORE限定セット(初回限定盤+オリジナル・シリアルNo.入りTシャツ) /¥9,900(税込)
https://victor-store.jp/item/37991

〈CD 収録曲〉
01 Ub(You bet on it)
02 雀の子
03 それは永遠
04 Ready to get started?
05 実はもう熟れ
06 アマテラス
07 停電の夜
08 Goodbye, Annie
09 The Long Bright Dark
10 Ophelia
11 SEX

〈DVD「STUDIO LIVE 2023」収録曲〉 ※初回限定盤のみに付属
スタジオセッションライブ映像5曲収録
01 SPF
02 Ready to get Started?
03 Goodbye, Annie
04 Ub(You bet on it)
05 それは永遠

『GRAPEVINE TOUR 2023』

10月6日(金) 札幌ペニーレーン24
10月8日(日) 仙台 Rensa
10月14日(土) 新潟 LOTS
10月15日(日) 長野 CLUB JUNK BOX
10月21日(土) 福岡 DRUM LOGOS
10月22日(日) 広島 VANQUISH
10月26日(木) 東京 LINE CUBE SHIBUYA
10月27日(金) 名古屋 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
10月29日(日) 岡山 CRAZYMAMA KINGDOM

オフィシャルサイト:https://www.grapevineonline.jp/

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