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私の「良かれ」も、もしかしたら嫌がられていることがあるのかも
─7月5日に配信された“良かれ”について伺いたいです。リリースコメントに「「良かれ」と思ってやったことが空回りしてしまった経験から書いた曲」とありましたが、どんなことがあったんですか?
おーたけ:普段からずっとそうなんですよね。よく言えばサービス精神がすごいんですけど、「そこまでしなくてもいいよ」って人から思われるようなところまで行き着いてしまったりして。自分でも「なんでこんなことしてるんだろう」って疲れてしまうんです。
おーたけ:あるときに叶姉妹のポッドキャスト(『叶姉妹のファビュラスワールド』)を聴いていたら、「彼氏からあまり必要じゃないものをプレゼントされて、喜ぶ演技をしなきゃいけない」という「良かれと思って」をされた側のお悩みが寄せられていて。私の「良かれ」ももしかしたら嫌がられていることがあるのかも、と思ったんですよね。そういうことにモヤモヤしながら歌詞を書いたら、<良かれと思って 満足できたら 曖昧でいいの どうせ忘れるなら>というサビのフレーズが生まれて。
─おーたけさんの楽曲からは、ネガティブな感情があってもあまりそちらに引っ張られ過ぎない軽みや、「それでもいつかは大丈夫になれるはず」という人間の素朴なパワーを信じようとしている印象を受けます。
おーたけ:“ルーズ”は、もともと「やればできる子」の略で「YDK」というタイトルだったんですけど、そうやって自分に言い聞かせてるんですよね。「私はできる、私はできる」って。自分の歌詞には、いつもそうやって自分に言い聞かせたり、俯瞰して自分をちょっと小馬鹿にするような感覚がある気がします。


─おーたけさんの歌詞には、どこかざわっとするような引っかかりのあるフレーズがたびたび出てくると感じますが、言葉の選び方はどこからきていますか?
おーたけ:どこかでパンチラインを入れたいと思っていて、強いもの、弱いもの、いろんな種類のパンチラインを用意して、組み合わせているような感覚です。あとはなるべく難しい言葉を使いたくないんです。3歳になる甥っ子がいて、それくらいの年齢の子でも口ずさめるような歌詞がいいなとずっと思ってきました。あるとき谷川俊太郎さんの詩集を読んだら、全部素朴な分かりやすい言葉で書いてあって。
─一つひとつの言葉は易しいですよね。
おーたけ:そう、それで「自分がやってきたことって正解だったんだ」と思えたんです。それからさらに、素朴さに磨きをかけたいというちょっとした信念が生まれました。

