ライブシーンを中心に活動する、シンガーソングライターのおーたけ@じぇーむず。ソロとしても活動を行いながら、今年のRISING★STAR FINALISTにも選出された、一寸先闇バンドに軸足を置いている。今回は、一寸先闇バンドとして、7月5日に『良かれ』を配信リリースしたばかりのおーたけ@じぇーむずに、彼女とゆかりの深い西荻窪のアートリオンでインタビューを行った。
「自分一人の満足のために何かをすることが、本当にないんです」と目を伏せて笑いながら、自分のことを聞かれたり、自身を顧みて話をすることに、どこかぎこちない様子を見せていた彼女。一時は月に25本もライブをしていたこともあったというほど、ひたむきに音楽活動に向かう理由や、日常の中のふとした瞬間に揺れ動く感情の断片を、ぽつりぽつりとこぼすような楽曲がどのように生まれるのかが、言葉の端々から垣間見えた。
INDEX
苦しい時期を抜け出すキッカケをくれた、メンバーの優しさと、広告仕事
─今日は、いつも音楽制作のために使っているノートを持ってきていただいたんですよね。
おーたけ:iPhoneにもメモしているんですけど、「こういうことを歌いたいかも」という内容を断片的に書いていて。ギターを触っているときにいい感じにコードがつながったら、歌詞をパズルみたいにつなげていくんです。あとは一昨年ぐらいから、自分が出たライブのセトリも全部メモしていて。(ノートをめくりながら)……大丈夫かな。何かネガティブなこと書いてなかったかな(笑)。


─日記的なことも書いているんですか?
おーたけ:たまに書いてますね。「今日の私、声良くなかったわ」っていうちょっとした反省点だったり。
─楽曲のアレンジについてもメモ書きがありますね。
おーたけ:『知らんがな』(2021年11月)までは絶対に自分の編曲を曲げたくなくて、「こういうふうに音を出してほしい」という希望をバンドのメンバーに明確に伝えていたんです。でも、『ルーズ』(2022年7月)の時にまったく曲がつくれなくなって。何にもできない自分が本当に嫌になって、メンバーに相談したら、「口出ししてよかったんだね」って、アイデアを出してくれるようになったんです。それですごく気持ちが楽になりました。
─それまでは、おーたけさんが自分で編曲をやりたいと思っている気持ちを汲んでくれていたんですね。
おーたけ:きっとそれまでもアイデアは持っていて、意見を言いたいこともあったと思うんですけど、みんながやらせてくれていたんです。でも作曲やアレンジの中で、毎回同じことをやっているような気になっちゃって。回らなくなってきたところでメンバーが参加してくれました。ただ曲づくりだけはまだ譲りたくないです(笑)。
─“ルーズ”は、職業としてミュージシャンをやるうえでの態度について歌っているというお話をあるインタビューで読んで。おーたけさんの中で、音楽を仕事にすることへの思いというのは強いのでしょうか?

シンガーソングライターとして活動をしているおーたけ@じぇーむずを中心に2019年に結成。ジャンルに囚われない自由度の高いサウンドでありながら、ブレる事のない歌詞の世界観と、感情的に訴えかけてくるおーたけ@じぇーむずの声によって、独自の音を奏でている。(オフィシャルサイト)
おーたけ:すごく憧れがありますね。今年の3月に初めて「銀座ポエトグラフィー」というプロジェクトで作曲の依頼があって、「きた!」と思って。銀座の街に張り出される詩に対して曲でアンサーしてほしいという内容だったんです。
─初めて広告の音楽の仕事をやってみてどうでしたか?
おーたけ:すごく楽しかったんです。「開放的な空気感の曲がほしい」と言われたので、その言葉に忠実にやろうと思ってつくったら、ほぼ一発OKで。この依頼をくれた方が、「いい曲ですね、納品した後にずっと口ずさんでます!」って、そういうポーズじゃないかと思うぐらいに(笑)、褒めてくださって。クライアントがそんなふうに気に入ってくれたんだったら、自信を持って「私が書いた曲だ」と思おう、と。その案件を経て、自分の曲に対して前よりポジティブになれたんです。
─逆にそれまではおーたけさんの中でご自身の楽曲に対してどこか自信がなかったということでしょうか?
おーたけ:もちろん、最低限はあったんです。例えばライブの会場BGMとかで、ふとした瞬間に自分の曲を聴くと「あ、いい曲だな」って思ったり(笑)。でも「自惚れかな」っていう疑いもちょっとだけあったりして。「銀座ポエトグラフィー」の経験から、自分が持っているものを信じていいかもしれないと思えたんです。
