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松山ケンイチはなぜ変わったのか。人生を見直した先に、オルタナティブな俳優道があった

2023.6.21

#MOVIE

「全身全霊150%で臨んできた」これまでとは異なる、軽やかさ。変化した俳優業への向き合い方と、時間の使い方

―松山さんはこれまで、じつに幅広い役柄を演じられてきましたが、ここ最近はとくに軽やかさが増しているような気がしていて。ここ数年で、仕事に対する向き合い方が変わったところもありますか?

松山:そこまで意識しているわけではないですけど、時間の使い方はここ数年でだいぶ変わりました。変な話、俳優活動にかける時間を少なくすることが、いい結果につながっているような気がしていて……これ、不思議なんですけどね。100%全身全霊でやったら、100%のパフォーマンスが出るかと言ったらそうとも限らない。

俳優以外のいろんな活動をするようになって、時間配分が変わってきたと思います。そうするなかで、俳優の仕事もすごく楽しめるようになりました。俳優業だけをずっとやっていると、結構悩んじゃうんですよね。いまでも役作りには悩みますけど、より現場で楽しみながら悩むようになったと思います。

―松山さんは、役作りに関してストイックな俳優という印象がありましたが、最近はそういう感じでもなくなってきた?

松山:昔はもう、全身全霊で臨んで150%の力を出して、そのあとボロボロになる、みたいな感じでしたね。いまは心身ともに、150%でやり続けることはできないなっていうのは、年齢を重ねていくなかで感じたことではあります。

なので、いまは、家に帰ったら気持ちを完全に切り替えるようにしています。家でも役のことを考えていると、目の前のことに向き合えなくなりますから。子どもや妻に対しても、趣味に対しても、あまり考えられなくなってしまうんですよね。それって、すごくもったいないと思って。

―時間の使い方が切り替わっていったのは、いつ頃なんですか?

松山:30歳ぐらいですかね。その頃、子どもが3〜4歳になって、自分の意見を言うようになったんですけど、それを聞くこともできない、余裕のないお父さんになっていると思ったんです。

子どもが4歳ってことは、ぼくもお父さんとして4歳なわけです。だから、そこで子どもと一緒に成長したり学んだり共感し合ったりしていかなきゃ全然足りない。それが仕事のせいでできないのは、すごくもったいないじゃないですか。

それで、時間配分を変えていったらどんどん力が抜けていって、ぼく自身も楽になったし、人や物事の違う部分も見えるようになってきた。それまでは視野が狭すぎて、目の前の面白い世界に気付けなかったり、何かを教えてくれる存在があったのに、それをキャッチできていなかったんです。

―その変化の最たるものが二拠点生活だと思うのですが、その生活スタイルを始めてから、どれぐらいになるのでしょう?

松山:4年ぐらいですかね。

―二拠点生活を選ぶことは、俳優としても大きな決断だったと思いますが、当時の心境はどういうものだったんですか?

松山:やっぱり、仕事よりも自分の人生のほうが大切なんです。そこをはき違えたくないとは思っていて。仕事は自分の人生の一部でしかないですよね。それはどんな仕事でも同じだと思うんですけど。

さっき言ったみたいに、いろんな人と向き合う時間をつくるためには、東京を離れなきゃいけないと思ったんです。自分の場合、東京ではオンオフの切り替えがうまくできなかったので。畑仕事や、自分がやりたいことは田舎のほうがやりやすいというのもあって。

―二拠点生活を始めていかがですか?

松山:基本的にはすごく楽しいです。その土地土地で地形も気温も違うし、文化も違う。だから、その人のものの考え方も、生まれ育ったそれぞれの地域で違っていて。最近はそれを実感するのがすごく面白いです。

―田舎暮らしと言っても、隠居生活みたいなものではなく、現地でいろいろな人たちとコミュニケーションをとられているようですね。

松山:そうですね。田舎にいるほうが全然忙しいですよ。東京にひとりできたら、休みみたいなもの(笑)。畑仕事含め、あっちにいるときはやらなくちゃいけないことが多いので。

ぼくの住んでいる場所のまわりは農家さんだらけなので、その人たちにいろいろな話を聞きながら畑をやっているんですけど、楽しいですよ。自分で育てた作物や、自分で釣った魚はすごく美味しい。単純に喜んで食べます。お金を払って食べると不満が出ることもあるけど、自分でつくったら、虫食いだろうが何だろうが喜んで食べます。

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