いま国内外を覆う排外主義的な潮流。7月に行われた参議院選挙では、排外的なメッセージを掲げた政党の躍進も大きな話題となった。
音楽シーンも無縁ではない。大物アーティストらの差別的な言動が取り沙汰される一方で、春ねむりをはじめとする何人かのアーティストが批判的な楽曲を発表するなど、それに抗う動きも生まれている。
音楽と排外主義をめぐる今の状況をどう見ているのか、3人の音楽ライターに聞いた。座談会「What’s NiEW MUSIC」第3回。
INDEX
春ねむり、Worldwide Skippa、ERONEのアクション
つやちゃん:まず、いま日本で進行している排外主義というのが、短絡的に外国人は危険であると結びつけたり、快・不快の感情レベルで判断してしまっているものが多くて、とても危ういと思っています。その中でも、特に矛盾しているのはやっぱりヒップホップとかレゲエとか、ディアスポラ文化をルーツに持つ音楽シーンにおいても排外主義が顔を出してきている、という。
—はい。
つやちゃん:ヒップホップは、周縁化された人々の声を可視化して、差別や不平等に対抗する文化として生まれてきたものなので、それなのに、日本でその文化を受容した人々が、外国人をはじめとする他者を排除する立場に回ってしまうというのは、歴史的にも文化的にも大きな矛盾なんじゃないかなと。その中で春ねむりさんとか、Worldwide Skippaとか韻踏合組合のERONEさんとかが、その点について「曲で」発言したっていうのは、ルーツを思い出させる重要なアクションだったんじゃないかなと思ってます。
風間:春ねむりさんと、Worldwide Skippa、ERONEは、取り扱っているトピックは近いですけど、論調や語調はけっこう違いますよね。春ねむりさんはすごくストレートに(選挙の)候補者の名前も出していて、Worldwide Skippaは普段のリリックから「この人ってマジでめっちゃXを見てるんだな」っていうのがうかがえるんですけど、Xの中に取り巻いてる良くない空気を切り取ったっていうところもある。ERONEに関しては、そういうふうな流れをまた受けて距離のあるところから投げてくるっていう、単純なポップスとしての面白さもあったし。