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EDMリバイバルと「ただ踊るポリティクス」の有効性
—つやちゃんさんはいかがですか?
つやちゃん:ニーナジラーチ(Ninajirachi)の『I Love My Computer』がすごく良かったですね。いまEDMがリバイバルしつつあるなというのを感じています。ニーナジラーチもそうですし、もうすぐ出るFrost Childrenのアルバムも、EDMを違う形で再解釈していて。日本のアニメカルチャーやインターネットカルチャーが好きで、そういったミーム的な感性とEDMを結びつけて……「どういうサウンドやねん」って感じだと思うんですけど、そういう表現がたぶん合っていると思うんです。
風間:ニーナジラーチのジラーチは、ポケモンの名前なんですよね。
つやちゃん:そうそう。EDMって、マッチョな商業音楽みたいに悪く言われがちだったと思うんですけど、だいぶイメージが変わっているなという印象を受けています。この何年か、言葉による価値観の衝突が多く起きている中で、もう一回ダンスミュージックによる言葉を介さずにただ踊ることでのポリティクスみたいな、そういったものが、次に有効になるような気もしていて。
島岡:EDM再熱をすごい感じますよね。デヴィッド・ゲッタ(David Guetta)とか、リアーナ(Rihanna)がカルヴィン・ハリス(Calvin Harris)と一緒にやってたときとかの感じが、いまアメリカの若い子にウケているのかなと。去年TikTokとかInstagramのリールで、Clean Bandit“Symphony (feat.Zara Larsson)”という曲が流行っていたのを、いまのお話を聞いていて思い出しました。すごく元気な曲と、イルカの画像に、「I’m depressed」とか「I don’t have money」みたいな対照的な言葉をコラージュするのがすごく流行っていたんです。
つやちゃん:音楽好きな人であればあるほど、「EDMリバイバルだけは勘弁してくれ」って言うじゃないですか。
島岡:そうなんですか? 私はぜんぜんウェルカムですけど。
つやちゃん:自分もウェルカムですけど、嫌いな人が多いから……。でも言いたいのは、ニーナジラーチはみんなが思い描いてるEDMとちょっと違うもので、例えばピンクパンサレス(PinkPantheress)がドラムンベースを全然違うものにしたり、ビーバドゥービー(Beabadoobee)が1990年のインディロックをガーリーにしたような、そういうイメージで捉えてもらった方がいいかなと思っていて。EDMリバイバルと言っても、みんなの思い描いてるいわゆるEDMの感じじゃないから、避けずに聴いてみてほしいなって思います。
島岡:私は地方に住んでいて、昔はウェッサイのヒップホップやEDMがズンズン鳴ってる大きい車がよく通ったりしたんですけど、あの感じがなくなったのは寂しいなとここ数年思っていたんです。街から音楽が消えた……とまでは言わないですけど。音楽は街から鳴った方がいいと思うんで、車からEDM、どんどんかけて欲しいですね。
つやちゃん:うん。みんな、街でニーナジラーチを流そう!