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MON7Aは日本のクアデカ?
—クアデカ(Quadeca)『Vanisher, Horizon Scraper』の感想もみなさんに伺ってみたいと思っています。
つやちゃん:すごく感動しましたね。クアデカはもともとエモラップとかから出てきた人で、エモーションをサウンドに現していくことに長けている人だと思うんですけど、単に爆発するエモーションを発散していくのではなく、情緒をどう自然の風景に溶け込ませていくか、というようなことを、やり始めている印象を受けました。
風間:わかります。アルバムの冒頭から、シコ・ブアルキっていうブラジルの大ベテランの曲をサンプリングしていたり、その後もボサノバっぽい箇所が何ヶ所かあったりして、そういうものを取り入れる柔軟さも見えました。
つやちゃん:ハイパーポップ以降、AI生成音とか加工的なサウンドが主流になってきている中で、アコースティックの生々しさとか、強い物質感みたいなものをいかに導入して新しいリアリティを生み出すかが、いま盛り上がってきている感じがしています。エセル・ケイン(Ethel Cain)のアルバムもそうでしたし、国内だと、今度アルバムが出るsafmusicあたりも、もしかしたらそうなのかもしれないです。自然の神話的な力強さ、自分の支配を超えた崇高さみたいなものに、若い人たちが惹かれはじめているような流れも薄々感じます。ちょっと話が広がっちゃいましたけど。
島岡:私はお恥ずかしながら存じ上げなくって……。今回ちゃんとアルバムを聴いてみたんですけど、配信ストリーマーからラッパー / ミュージシャンに転身したというので、もっとハイパーポップみたいな感じを想像していたんですけど、ぜんぜん聴きやすいベッドルームミュージックみたいな感じもあって驚きました。ストリーマーとアーティストの交差の流れは、特にアメリカやイギリスではドレイク(Drake)とかも含めてここ数年見えるので、今後は、起点みたいなものはもう問われない時代なのかなと、聴いていて思いました。
つやちゃん:クアデカは、そこにルーツがあることで、批評周りからの評価はまだまだ追いついていないですよね。偏見なんでしょうね。もどかしいところですけど。
風間:日本ではストリーミングや若者文化にコミットしたところから、こういうアーティストって出てくるのかな? と考えていて。個人的には『今日好き』(※)に出ていたMON7Aくんがクアデカみたいになったら面白いのにな、実はなれるポテンシャルを持っているのはMON7Aくんなんじゃないかな、と思います。すごい適当に言ってるんですけど(笑)。
※『今日、好きになりました。』=Abemaで配信されている恋愛リアリティ番組