INDEX
プロとアマチュアっていう言葉自体、インディーにおいてはなくなった方がいいだろうなと今は思ってます。(後藤)
後藤:音楽と別に仕事を持っている人たちは、音楽では好きなことしかやらないって決めていたりして、それはそれで純粋で美しいんじゃないのかなと思ったりもしますね。仕事とか家のこともあったりして、限られた時間の中でバンドメンバーと集まるんだから、そんな貴重な時間にやりたくないことやらないじゃないですか。そういうところに宿る美しさをすごく感じる時はありますね。一方で、売れようとしてもがくっていう、ポップミュージック特有の邪念から生まれてくる良さっていうのももちろんあるんだけど。
若い人たちもむやみに仕事を辞めたりしなくなったというか、地に足がついてる人が増えてるなって気はします。それがいいことなのかどうかは、音楽を仕事にしている身としてはよくよく考えないといけない部分ではあるんですが。

tami:「思い込まなくてもいい」という面では、いいことな気がしますね。昔はこれをやるにはこれを辞めなきゃいけないって思い込みが強かった気がします。
後藤:昔は、本気でやっているのか趣味でやっているのかをすごく問われたりしましたよね。でも、草野球やっている人に「プロになる気ないのに野球やってんの?」とか聞かないですよね。プロとアマチュアっていう言葉自体、インディーにおいてはなくなった方がいいだろうなと今は思ってます。
tami:そうですよね。分ける意味ないですもんね。
後藤:「そんなこと関係ないんだよ。俺たちは音楽を作るのが楽しくてやってるから。これが人生を豊かにすると思ってやってるから」みたいな。バーンと売れて、音楽業界の政治に巻き込まれて、そこでサバイブすることが果たして成功なのか、幸せなのか、っていう。もちろん、それが幸せだって言う人もいると思うんだけど、それとは違う価値観でやってもいいんだよっていうことは言っていきたいですよね。

後藤:情報化社会になって、いろんなスタイルの音楽家の人生を見られるようになってきたじゃないですか。昔はロックスターのセンセーショナルな死とかばかりが目に入ってきていたけど、今はいろんな人が自分のライフスタイルを開示している時代だから。例えばLOSTAGEの五味くんみたいな生き方いいなあって思う人はたくさんいるだろうし(連載vol.1「LOSTAGEの五味岳久を訪ね、奈良へ。音楽をやめる、続けるとは?」)、一方でELLEGARDENの細美くんみたいに、生まれながらのロックスターなんじゃないかみたいな人にも憧れるし。いろんなスタイルがあっていい。でも結局、五味くんにも細美くんにもなれないから、自分なりのやり方を見つけるしかないんですけどね。